合肥 巣湖湿地の再生で「渡り鳥の天国」が再現

 

浜湖湿地公園の上空を飛翔する鳥の群れ 司勝平=写真

寒々とした初冬の早朝、鄭先超さんはいつも通り早々に船に乗って、湿地の奥まで入って、一日のパトロールの仕事をスタートさせた。ここは中国五大淡水湖の一つ、巣湖の湖浜国家湿地公園で、多くのカモメやサギが上空を舞っている。

進んでいくモーターボートが長い波紋を残し、水鳥がそれを追いかけてきて、まるで離れ難いかのように旋回している。「船は水中の酸素を攪拌するので、魚がそれに集まって来て、鳥もエサにありつけるのです。こいつらはとても狡猾ですよ」。鄭さんの語気には鳥への愛情が感じられた。

中国の「三河三湖」整備重点流域の一つとして、近年、巣湖のある合肥市は一連の水源からの整備措置をとっていて、最近ではさらに人民代表大会立法という形式で湿地保護に法治の力を注いでいる。湿地の生態は再び活気を取り戻し、しだいに水草が生い茂る「渡り鳥の天国」となっている。

46歳の鄭先超さんは家が巣湖の岸辺にあり、彼はこの土地で生まれ育った漁民で、「巣湖三白」といわれるシラタエビ、白絲魚(体が柳の葉状で長さ8~50センチの高級淡水魚)、シラウオが彼の自慢だ。鄭さんの記憶では、周辺の湿地には毎年水鳥が集まっていた。

典型的なチョウ形湖である巣湖は、数百年前の湖面面積は今よりもずっと大きく、湖水の減少により大きな湿地干潟が生まれた。水利工事と都市発展により、湖の周辺にある自然湿地の埋め立てが進み、ここに渡って来る鳥も年を追うごとに減少していた。

安徽省環境科学院水環境研究所の匡武所長によると、湿地には水源を保ち、水質を浄化し、生物の多様性を維持するなどの生態機能があり、巣湖を人間に喩えれば、浅瀬湿地は湖の腎臓ともいえるところで、「腎臓機能が衰えを回復させるのはとても難しい」とのことだ。

近年、合肥市は湿地保護を巣湖生態整備の重要な足がかりとしており、巣湖周辺の十大湿地保護修復は、安徽省が実施する長江デルタ一体化発展計画綱要の行動計画に組み込まれている。

合肥市林業園林局湿地処の羅法竜処長によると、巣湖湿地の回復を強化するため、合肥は湖堤外側および流入河川湿地の修復を重点とし、農地や家畜飼育地、住宅地を湿地に戻し、湿地の生態空間を拡張することに力を入れている。

今年初めから、巣湖の50万ムー(約3.33ヘクタール)の水域が禁漁から全年禁漁へと変わり、「10年間の禁漁」計画もすでに正式にスタートしている。

「これ以前の数年間、湿地公園には遊覧船もありましたが、エコツーリズム開発を行おうと思い、今ではすべての観光プログラムを禁止し、純粋にこの自然水域をきちんと保護しようということになりました」と鄭さんは語る。

 

湿地の水面に集まるユリカモメ

人が去ると、鳥が戻ってきた。昨年末、100羽余りのコウノトリが巣湖半島国家湿地公園に飛来した。コウノトリは中国国家一級保護動物に指定されており、こうした大型水鳥は生息地の選択に厳しい要求があり、これは新しい世紀に入ってから初めて巣湖流域で観測された飛来となった。

今では、巣湖の湿地面積の拡大に伴って、水環境と生態条件が改善し、ヘラサギ、ヒシクイ、ユリカモメ、マガモなどますます多くの珍しい鳥がここに休息や越冬に訪れている。現在、巣湖沿岸で記録された鳥類は合計300種余りにのぼる。

「渡り鳥が戻ってきたことが、湿地生態が良くなっている最も有力な証拠です」と安徽大学資源環境工程学院の周立志教授は語る。

十五里河の河口湿地では、今年に入ってから水質が安定しており、過去最良レベルに達していて、湖に流れ込む水質は顕著に改善している。このほか、最近行われた全面調査によると、巣湖湿地資源記録に記載された植物の数量は2013年の211種から275種に増えている。

 

最近、コウノトリが花塘河湿地の巣湖への流入口に出現した 銭茂松=写真

今月初め、合肥市人民代表大会常務委員会は「巣湖十大湿地保護強化に関する決定(草案)」を採択し、十大湿地の保護面積と範囲を法によって規定し、これが発表された後には、生態機能は下がらず、面積も減らず、性質が変わることもなくなるだろう。

合肥市人民代表大会常務委員会農工委員会の何潔主任によると、この「決定」は許可を経ない干拓、漁猟、汚染物排出などの湿地保護区内での一連の禁止行為を明確にしており、草案の採択により、巣湖湿地周辺および巣湖流域の生態整備に重要な法的保障を提供することになる。

湿地保護の目的から、鄭さんの住んでいた湖ぞいの村もまた、全体移転させられた。「故郷の土地は離れ難い」ものの、彼は、十年後に孫が生まれた時、さらに美しくなった巣湖を子孫に残せることに慰めを見い出している。(新華社)

 

人民中国インターネット版 20191219

 

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