変貌遂げる安徽省 ハイテクとエコで強み発揮(三)環境と都市を効果的に管理

 

中国経済の発展のレベルが絶えず高まり、行政運営のレベルも日増しに向上する中、安全かつ利便性があり、調和の取れた社会環境は全ての人々と密接な関係がある。「共同建設共同管理共同享受」は、新時代の中国が提起する社会発展の理念だ。合肥市と黄山市の取材では、林長制や河長制など斬新な管理方法の実施によって、社会統治の効果が大幅に向上し、特にモノのインターネット(IoT)やビッグデータなどの新技術の応用が生活をますます安全かつ便利にしていると実感した。

森と川の番人

合肥浜湖湿地森林公園の道路の両側には、てっぺんが見えないほど高いポプラの木が立ち並ぶ。温もりを感じる初冬の陽光を浴びながら新鮮な空気を吸い込むと、心まで洗われる心地になる。合肥市包河区にあるこの公園は、巣湖の北岸に近く、南淝河の河口に面している。公園の入り口に設置された石には、「林長方彪」などの文字が記されている。方彪とは、同公園の党委員会書記で、この公園を管理する「林長」の名前だ。

50代の方彪さんは、公園の建設当初からここで働いている。彼によればこの公園は本来、政府の退耕還林(耕地を森林に戻す)政策実施後にできた広い空き地だった。工事が始まった2012年当初は、水路跡の溝だらけで、大量のポプラが生えていた。「市政府は当時、森林公園の建設を決定するとともに、優先的な保護、生態系の保持、合理的な使用、持続的な発展という原則を定めました。その時から私たちはここに駐在し、計画から道路の整備、植樹、水源の保護などを7、8年がかりで行いました」と方さんは振り返る。公園は総面積1072という大きさで、緑被地が799、水面が263ある。植樹した本数は合計約150万本で、現地の生態系の修復状況と保存状態は良好だ。

17年6月、合肥は全国に先駆けて林長制を試験的に導入した(9)。林長制とは、市が管轄する地域全体の森林をレベルやエリアごとに管理するというもので、省クラスの指導者をトップとする5級制の林長を設定し、各クラスの林長が担当管轄地域の森林を管理する責任を担う。浜湖湿地森林公園は合肥で重要な森林資源地と生態保護区だ。林長制の試験的な実施として、方さんは1級林長になった。「林長になって最初に感じたのは、責任の重さです。公園の全ての樹木に対して責任を持たなければいけません。職務も明確で、何か問題があれば上級の林長に報告し、複数の責任者が同時に管理しないようにすることで、問題解決の効率を大幅に上げています。林長制は担当エリアをはっきり定めて管理しているため、私たちは責任をより的確に果たせ、環境の管理により専念できるのです」

方さんはこの広い公園で、林長制のやり方を園内にも生かし、各森林エリア、池や湖、通路を担当者を指定して管理している。防火、安全、衛生、樹木や水質の保護に適当な人員を配置し、責任を明確にしている。方さんによると、公園の木はここ数年増加しており、種類は381種に上り、そのうち水生植物は50種近くある。環境が良くなるにつれて公園を訪れる鳥類も増え、81種のうち4種は国家第2類保護動物だ。園内の美化も進み、木々、アシ原、竹林、花園などさまざまな景色が楽しめる。豊かな自然は、ここが「合肥の肺」と呼ばれるゆえんでもある。

安徽省には林長制の他に河長制(各クラスの責任者が管轄地区内の河川の水環境保全の責任を担う制度)も実施している。黄山市屯渓区柏樹街コミュニティーの党委員会書記の畢鳴さんは、同コミュニティーの河長だ。黄山市は浙江省と安徽省を流れる新安江の上流域にあり、河長の畢さんはコミュニティー周辺の河川の管理責任を担っている。河長就任初日、川岸の標識に畢さんの名前が刻まれた。畢さんによると、彼が管理する川の区間は約1で、河長の主な仕事は川辺の日常的な見回り、水害防止システムの問題の有無の確認、川辺付近の市民たちへのマナー喚起だ。畢さんが使っているスマートフォン(スマホ)には河長用アプリが入っている。河長は規定に基づいて行う週2回の河川点検の際、問題を発見したらすぐに写真を撮ってアプリに送信する。「河長がアプリに情報を送信すると、市クラスの河長オフィスが直ちに関係部門に指示して現場を処理します。アプリのおかげで、仕事が効率的に行われています」

畢さんが所属する柏樹街コミュニティーは黄山市の旧市街地にあり、8000人以上が住んでいる。ほとんどの人々が川辺で生まれ育ったため、川で泳いだり、釣りをしたり、川辺で洗濯物を干したりすることが以前はよく起きていた。そして畢さんの河長としてのもう一つの職務は、マナー向上、川辺の環境管理、ごみの分別、河川管理規定などについて住民を啓発することだ。数年の努力が実を結び、住民の環境意識は大幅に向上し、マナーも改善され、環境をより良く管理できるようになった。「川や川辺が美しくなり、ここに暮らす住民の気持ちも和やかになりました。時間がたつにつれて、環境を保護しながら、環境の恩恵を受けることが住民の共通認識になりました」と畢さんは自信を込めて話す。

現在、林長制と河長制は効果的な管理方法として、中国各地で活用されている。

技術の応用で安全かつ便利に

清華大学合肥公共安全研究院の実験室で、研究員が直径約20の球体型装置を見せてくれた。これはスマート検査ボールといい、スマート感知装置が内蔵されており、都市の地下パイプライン網を移動し、パイプラインの内部の状態に関するデータを地上の受信設備にリアルタイムで送信する。研究員はデータを分析して、パイプラインに破損箇所がないかを調べる。この装置は1度で1の走行が可能、誤差は1以内、水道、ガス、石油などさまざまなパイプラインで使用可能だ。このシステムはすでに合肥の都市管理で使用されている。

合肥市と清華大学によって13年に設立されたこの研究院は、都市の公共安全を専門に研究している。スマート検査ボールは、この研究院が現在展開している都市ライフラインプロジェクト安全モニタリングシステムを応用した機器の一つだ。このモニタリングシステムはIoT、ビッグデータ、クラウドコンピューティングなどの先端技術を使用し、都市の給水管やガス供給管などの地下パイプライン、橋、軌道系交通機関、高層ビルのエレベーターなどのインフラに対して、感知システムによる監視と警戒を行い、管理部門にリアルタイムでデータとソリューションを提供する。研究院の汪曙光副院長は、次のように話した。「都市の公共安全は市民一人一人と密接な関係があります。都市化の高速発展の段階にある中国は、都市部への人口集中や複雑なインフラ整備環境という特徴のため、都市の安全管理や運営の難易度も非常に高く、新技術の応用が急を要しています。このシステムは都市の各種インフラを全体的にモニタリングする世界初のシステムで、世界をリードする技術が多く使われています。これも都市管理方法の革新であり、都市スマート化の構築に非常に重要な役割を果たします」。汪さんによると、研究院は合肥市全体の50以上の立体交差橋や、200以上の地下パイプライン網を対象にリアルタイムの検査と監視を行っていて、成果を上げている。

研究院は都市危機管理システムも研究しており、水質汚染の計測技術や工場の危険源同定など、安全面での研究成果や設備が豊富だ。同院が研究開発した都市危機管理システムは、エクアドルやドミニカなど中南米諸国に輸出されており、現地に全く新しい都市管理の理念をもたらした。

都市管理だけではなく、インターネットやビッグデータなど先進的な管理技術は観光地の管理にも応用されている。安徽省の黄山は中国の著名な観光地であり、この山の悠久の歴史や文化、そして美しい自然は国内外にも広く知られており、自然と文化の複合遺産として世界遺産に登録されている。

黄山は観光ルートも整備され、観光客のマナーも良い。現地の管理人によると、黄山がしっかり管理されているのも、スマート黄山総合管理システムのおかげだという。黄山総合管理ホールでは、壁に設置された巨大モニターに毎日の入場者数や山火事警戒レベル、各観光スポットのリアルタイムの映像などが表示され、数人の作業員がコンピューターで山の状況をチェックしている。黄山観光地宣伝部常務副部長の程亜星さんによると、黄山の管理システムは入下山する観光客や自動車の管理や統計に使えるだけでなく、さらに火災監視機能もある。山内には温度を検知する多数のサーモグラフィー装置が置かれ、管理センターにリアルタイムでデータを送信している。希少な木についてもリアルタイムで監視し、分析されたデータが管理に一役買っている。「管理人として、この地の自然文化遺産をどのように守るかを研究するとともに、観光客の満足度をどのように向上させるかも考えました。データによって、観光客数が平均的ではないことが最大の問題だと気付きました。平日では約3万人ですが、休日や祝日だと一気に増えるのです」と程さんは話す。そのため、大型連休期間中は入場制限をし、最大で1日5万人しか受け入れず、3万人に達した時点でシステムが警告を出す。さらに、黄山の管理システムが多数の旅行会社と情報を共有しているため、警告を受け取った旅行会社は直ちに状況を把握するとともに、ツアー客のスケジュールを調整し、旅行をさらに快適にする。

管理面のほかに、観光チケットの販売やホテルの予約などのサービス面でも、インターネットの活用によってさらに便利になった。黄山の観光チケットは、スマホアプリ、微信の公式アカウント、ホームページなど多くの窓口から購入でき、管理側との連絡も可能だ。SNSの応用によって、黄山の管理もいっそう円滑になった。程さんはこう紹介する。「体にロープを結んだ清掃員が崖を降りていってごみを拾うという動画を微信に投稿したところ、100万回以上再生されました。多くの人々がその光景に驚嘆するとともに、ごみのポイ捨ては絶対にやめようというコメントを書いてくれました。このような動画を投稿することも、観光客が知らず知らずのうちにマナーを改善していくことにつながるでしょう」。現在、黄山観光の微信公式アカウントは20万人以上のフォロワーを持ち、「友達の輪」を日に日に広げているだけではなく、黄山をより知ってもらい、より楽しんでもらうよう努力している。

 

人民中国インターネット版 2020年1月7日

 

 

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