映画にも描かれた自然

 からりとした空気の北京に戻った。湖南と日本をつなぐ、ゆかりの人に話を聞いた。映画監督の霍建起氏(61)だ。霍監督の3作目の映画「山の郵便配達」(原題は「那山那人那狗」)は、2001年に日本で公開されロングランヒットした。この映画の舞台が湖南省の田舎だった。湖南と日本をともによく知る霍監督が語った。

 「湖南は武陵源をはじめとして、美しい自然が特徴だ。汚染もなく水も澄み山も青々としている。こうしたところは日本の田舎と似ているところがある」

――実際の撮影はどうでしたか。

 「ロケハンで湖南省内を20カ所ほど回り選んだのが、婁底市の西隣の邵陽市にある綏寧と通道トン族自治県。手付かずの美しい自然に感動したが、当時、長沙から綏寧までは未舗装のでこぼこ道しかなく、丸一日かけてやっと着いたら全身がホコリまみれになった」

――日本人はこの映画を見て、自分の古里の田舎のようだと共感しました。

 「福井県の永平寺(曹洞宗の大本山)に行ったことがある。そのうっそうとした森や自然に感動した。湖南の自然とよく似ていて、『緑色』は独特の深みがあり、ともに詩的なものを感じる。こうした自然と人が溶け合った生き方が、日本の観客にも受け入れられたと思う」

 「また、日本人と中国人は感受性に似たところがある。しかも両国とも、現代社会では親子とくに父子の関係が希薄になりつつある。映画では、失われつつある父子の情愛を美しい湖南の自然を背景に描いているので、日本人は自分の古里と重ね合わせ、こうした感情を懐かしく感じ、強く共鳴する部分があったのだろう」