人も踊る伝統の人形芝居

 歴史のあるところ文化も育つ。湖南省の無形文化財に指定され、1100年以上の伝統を誇る婁星区増橋村のユニークな人形芝居「杖頭人形劇」を見に行った。

 この人形劇が他と違うのは、写真でも分かるように、人形を操る人が舞台下や幕の後ろに隠れるのではなく、姿を見せ音楽に乗り、人形と一体となって歌い踊る点だ。人形遣いが姿を見せるのは日本の文楽と同じだ。しかし、「杖頭人形劇」は専用の舞台以外に普通の広場などでも芝居をする。また、人が人形と同じような衣装を着て歌い踊るので、華やかさも増す。

 人形は大きさが約60。右手で頭から胴体につながる棒を操作し、左手で人形の左右の手を動かす2本の棒を操る。

 芝居が始まり、軽快なメロディーに乗って男女一組の人形人が踊り出した。この人形劇の6代目伝承者胡仲雲さんと謝桂平さん夫妻だ。出し物は、湖南地方の伝統劇である花鼓劇の名曲「劉海砍樵」。内容は夫婦の愛情あふれる掛け合いで、人形が見つめ合えば操る人も同時に見つめ合う。実は、胡さん謝さん夫妻は、若いころ一緒に杖頭人形劇を学ぶ中で恋に落ち、まるで芝居の物語のように本当の夫婦になったという。道理で呼吸がぴったり合うわけだ。

 現在、この人形劇の次代の担い手は地元の小学生たちだ。「一人前に人形を操作できるまで、熱心に練習しても1年はかかる」と胡さん。その小学生たちの芝居が終わると、集まった村民から「好(ハオ=お見事)!」と次々に声がかかっていた。