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「雄鷹」に羽根付けた・呉光輝

 

2014731日に行われたC919の機首組立完成の儀で機首を細かく確認する呉氏(左から2人目)(東方IC

 

   中国は長年、大型商用旅客機を国外機輸入に頼ってきた。中国は8億枚のシャツを輸出してようやくエアバス1機を手に入れることができ、10億足の靴下を輸出して、ようやくボーイング1機を手に入れることができると計算した人がいた。さらには、中国は翼のない雄鷹だとやゆする外国人もいた。

 

 2017年5月5日、国産大型旅客機C919が初飛行に成功し、とうとう空に中国人の大型ジェット旅客機(4)が飛んだ。このニュースは世界の注目を浴び、中国商用飛行機有限責任公司(以下、中国商用飛行機公司と略す)の副社長でC919の総設計士呉光輝氏もまた注目の人となった。

 

 

飛行機設計はラジオの組み立てから

 

 呉氏は小さい頃から電子製品が好きで、高校の時には自分でラジオの組み立ても行っていた。近所の人はラジオが壊れると、みんな彼に修理を頼みに来た。

 

 1977年、呉氏は南京航空学院に入学した。そのころの大学はまず入学許可を得て、後に専攻を選ぶという形だった。そのため、呉氏は大学入学後、飛行機設計専攻を選択した。「当時、この専攻は将来、飛行機を設計できるかもしれないと感じたのです。まさか自分が本当に総設計士になるとは思ってもみませんでした」。このことを思い返すたびに彼は笑みを浮かべる。それ以後、飛行機設計事業は彼が一生追求し愛するものとなった。

 

 大学卒業後、彼は航空システムに関する仕事に就いた。最初の職場は陝西省で、西安から車で3時間かかる閻良にあった。「外の世界がどれほど素晴らしいか、私は全く知りませんでした。私はずっと飛行機の設計に没頭しており、数十年間有給休暇すら取りませんでした。この仕事に就くわれわれは、みんなある種の航空の夢を持っていたと私は思います」と呉氏は言う。

 

 2005年、呉氏はARJ21民間旅客機の設計を始めた。ARJ21は中国が完全に独自で設計製造した新型ターボファンを搭載したリージョナルジェット機である。ARJ21の研究開発は、中国の大型飛行機プロジェクトのしっかりした基礎をつくり上げたばかりか、ARJ21プロジェクトを通じて中国が自らの民用飛行機市場開発製品の研究開発とアフターサービス能力を育成し始め、世界の民用飛行機市場での中国の地位を固めることになったと呉氏は考えている。彼のリードの下で、ARJ21リージョナルジェット機は飛行実験に成功し、ARJ21設計で蓄積された経験がC919設計の前奏となった。

 

10年で夢をかなえる

 

 2007年、大型飛行機の研究開発の正式なプロジェクトが立ち上げられた。翌年5月、中国商用飛行機公司が上海で成立し、呉氏はこの会社の副社長兼C919総設計士となった。

 

 それから10年間、一刻も早くC919を完成させるため呉氏と科学研究チームはいつも711(毎週7日間、毎日11時間仕事する)と724(重要な業務は毎週7日24時間体制で行い、作業者は交替で勤務する)体制で仕事を行った。

 

 国家重大科学技術プロジェクトとして、C919プロジェクトは「中国による設計、システムインテグレーション、世界からの入札、逐次国産化」を堅持した。これは中国が世界の航空業界における「従業員」から「指揮者」に変化したことを意味し、飛行機の100項目余りの鍵となるコア技術を独自で攻略し、掌握した。

 

 201612月、C919は上海浦東国際空港で初の滑走試験を行った。付近で空へ飛び立つ国外の民間旅客機に比べると、試験で行う滑走はとても簡単な飛行機の基本的機能である。しかし、中国が独自で研究開発を行ったC919にとって、初めて自分の動力により滑走することはまるで赤ちゃんが人生の第一歩を踏み出すようなものである。空港では全ての人が固唾をのんで感動の瞬間を待ち受けていた。

 

 しかし人々の期待を裏切り、C919の初めての滑走はわずか十数進んだだけで止まってしまった。総設計士として呉氏はこの時とても焦ったという。「それしか滑走しないなんて信じられませんでした。いったいどこに故障が起きたのか。C919大型旅客機第一機チームの蔡俊機長は、ブレーキシステムに問題があることを明らかに感じ取ったと言いました」と彼は回想する。

 

 初滑走は挫折したものの、研究開発メンバーはいつまでも落胆していなかった。彼らはC919初の飛行機のブレーキ性能に細かな調整と検査測定を行った。2017年4月22日、C919第一機の滑走実験が再び行われた。今度は高速で滑走しただけでなく、前輪を持ち上げ、青空に向かって出発を待つ姿勢すら取ることができた。

 

 20175月5日、C919はとうとう初飛行の日を迎えた。呉氏は「われわれは考えられる全ての突発事故に対処案を考えていましたが、全てがとても順調に進みました。われわれは初飛行の過程でキャビン内部の状況について実況中継を行ったほどで、これは国際的にも初めてのことです。その結果、いかなる故障も発生しませんでした。これはわれわれにとても大きな自信を与えてくれました」と回想する。C919が無事に着陸した後、蔡機長がキャビンから出てくると、呉氏が彼を迎え出て、2人はしっかりと抱き合った。

 

 呉氏と彼のチームはまるまる10年をかけ、とうとう中国が大型旅客機を独自で開発するという夢をかなえることができた。初飛行の成功後、重荷を下ろした呉氏は初めて疲れを覚えた。「しかし、われわれが手を休める時はまだ来ていません。続けて試行飛行条例に基づき、飛行適合証明を取るための試験と試験飛行を行わねばなりませんでした」と彼は語る。

 

 C919の今後について、呉氏は次のように考える。C919と同型の飛行機は現在1機あたり1億程度が必要で、今後20年で中国では3000機またはそれ以上の数の飛行機が必要となる。今後30年で中国の民間航空の飛行機総数は8000から1万機となり、そのうちC919の需要は6000機近くになるだろう。

 

 「C919は中国が国際基準を採用し全く新しく設計した新型幹線用飛行機です。これは中国商用飛行機公司、科学研究機関、そして中国の航空関係者の心血が注がれたもので、さらに世界の航空業界の優れたリソースをも凝集しており、中国の飛行機であるとともに世界の飛行機であると言えるでしょう」と呉氏は語る。

人民中国インターネット版

 

 

 

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