ホーム ホットニュース 最新ニュース フォーカス 独占取材 キーワード 写真による報道
量子世界の扉を開ける・潘建偉

 

中国科学技術大学量子保存実験室で機器の稼働状況を確認する潘氏(新華社)

 

 SF映画では『ドラえもん』の「どこでもドア」のように人類が遠距離を瞬時に移動するシーンをよく見かける。実はこのような技術は全くのファンタジーというわけでもなく、その科学的原理は量子と関係がある。

 2017年1219日、世界的権威のある科学誌『ネイチャー』が発表した「17年度世界を変えた科学者トップ10人」の中には中国科学院会員で、中国科学技術大学教授で、「墨子号」量子科学実験衛星首席科学者の潘建偉氏が入った。彼のリードの下で中国は世界の長距離量子通信(8)技術の研究開発分野の先駆者となった。

 

追随者から先駆者へ

 今年48歳になる潘氏は中国科学院量子通信量子科学技術革新研究院の院長として、主に量子光学、量子通信、量子力学方面の研究に携わっている。世界で量子通信実験研究分野の先駆者と開拓者の一人として、彼は同分野で大きな国際的影響力を持つ科学者である。

 1987年、17歳の潘氏は中国科学技術大学に入学し、近代物理学部で勉強した。そこが、彼が初めて量子力学に接触した場所であり、彼はすぐにその学問の未知の現象のとりこになった。それ以降、量子に関するさまざまな問題をはっきり理解するために潘氏は量子力学を勉強し始めた。その後20年余りがたった。彼はかつて同大学の学長だった朱清時教授に次のように話した。「『量子もつれ』がなぜあるのかという問題を明らかにすることができればいつ死んでもいいです。しかし、今でもまだ明らかにしていないので、この問題の答案が見つかるまで長生きしたいです」

 1996年、潘氏は中国科学技術大学で物理学の修士号を取得し、海外で博士課程を勉強することにした。しかし、彼は研究の方向性や指導教官を遅々として決められず、家族も焦っていた。このとき潘氏は父親にこう語った。自分は留学したいから留学するのではない。正しい研究の方向性と正しい指導教官を選び、最も先進的な技術を身に付けて帰って来なければならない。

 結局、潘氏はオーストリアのウィーン大学のサリンジャー教授を選んだ。当時、サリンジャー教授はまだ有名ではなかったが、潘氏は量子力学の分野で博学なサリンジャー教授が、自分の心の中の指導教官だと考えた。現在、サリンジャー教授は量子力学の分野で世界的な大家となっている。

 1997年、サリンジャー教授の指導の下で、潘氏は第2筆者として『ネイチャー』に論文を投稿し、実験の中で量子テレポーテーションを実現したと発表した。これは量子通信実験分野を創始したものだと世界が公認したことを意味する。

 1999年、同プロジェクトはヴィルヘルムレントゲンのX線の発見やアインシュタインの相対性理論など世界に重大な影響を与えた研究成果とともに『ネイチャー』に「百年にわたる物理学の代表的論文21編」に選ばれた。潘氏は「かつて、われわれは科学研究で常に追随者と模倣者の役を演じ、研究の方向性の選択も科学研究プロジェクトの設立も全て世界で前例があったかどうかを先に考えた。量子通信は斬新な学科なので、われわれは先駆者と引率者となるよう学び、それに慣れなければならない」と述べた。

 そのとき、潘氏は29歳だった。そしてその年に彼は博士課程を修了して帰国した。

 

新時代に入る科学技術

 帰国後、潘氏は中国科学技術大学で中国でトップの物理学者を集め、中国の量子研究チームをつくった。2003年、潘氏はチームを率いて光子を自由に伝送する量子テレポーテーションを実現し、量子テレポーテーションがより広く量子通信と量子計算に応用できるようにした。2008年、彼らはさらに光子と原子間の量子テレポーテーションを初めて実現した。世界からは、中国人の学者がまるで奇跡を起こしたようだと思われた。07年、英国の『ニューサイエンティスト』誌は次のように評価した。「潘氏と同僚たちによって中国科学技術大学、ひいては中国が量子計算の世界地図の一角を占めた」

 2009年年初、潘氏はドイツのルプレヒトカール大学ハイデルベルクにある自分の実験室をまるまる中国科学技術大学に運んだ。「引越しのリストは長々と120もあり、レーザー機器から12のレンズまで全て持ち帰りました」と潘氏は振り返る。実験室で潘氏のチームは量子暗号通信技術において六つの「世界初」を成功裏に創った。「15年度国際物理学分野における10大ブレークスルー」で、潘氏チームの「多自由度の量子テレポーテーション」はトップに輝いた。

 「かつて物理学者の楊振寧氏と李政道氏は中国人が海外で素晴らしい『科学』的成果を挙げられることを証明しました。では私たちは中国人が国内でも素晴らしい『科学』的成果を挙げられることを証明したといえるでしょう」と潘氏は誇らしげに語った。

 2016年8月16日は潘氏にとって生涯で記念すべき一日だった。中国が独自で研究開発した世界初の量子科学実験衛星の「墨子号」の打ち上げに成功し、潘氏ら中国の科学者の量子科学実験を宇宙に送った。この量子衛星が執行した任務によって、人類の通信に無条件の安全が保証され、コンピューターの実行速度が大幅に向上し、将来人々がタイムスリップする夢物語さえ実現することも可能になるかもしれない。潘氏ら量子物理学者たちは人類のために量子世界の扉を少しずつ開けている。

 10年前の人々が今日のインターネットの姿を予見できなかったのと同じように、量子ネットワークにおいてもそのようなシーンが再現されるだろう。量子インターネットの始まりは世界の科学技術を新時代に突入させる。

 

人民中国インターネット版

人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850