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第13期全国人民代表大会第1回会議政府活動報告への感想

 

一財 国際貿易投資研究所 研究主幹 江原規由

 

 

 今回の政府活動報告で特に印象深かったのは、民生向上への言及が少なくなかった点である。例えば、教育、医療、雇用、農村、住宅、貧困などへの政府の対応策とその実績。このうち、貧困脱却を例にとると、過去5年の年率平均で、ほぼ日本の人口の10分の1にあたる1300万人以上(2018年:1000万人以上)が貧困から脱却したとしている。このことは、2020年に小康社会(ややゆとりのある社会)の全面的完成を実現するとの中国政府の固い決意の表明であり、その成果が着実に実っていることを示している。世界銀行が最近発表した報告によると、中国の高い経済成長と貧困の減少は“史上例をみない”と評価している(中国新聞網 2018224日)。

 

 その経済成長率であるが、2018年の経済成長率を昨年同様6.5%左右(前後)と設定している。昨年の実績は6.9%成長と設定値を上回り、経済規模(827兆元)で初めて80兆元の大台を超えた。今年は88.1兆元となる。果たして、達成は可能か。

 

 その鍵は、昨年10月開催の中国共産党第19回全国代表大会(党大会、19大)でも強調された質の高い発展の行方に大きくかかっていると考えられるが、この点、供給側構造改革(特に、「三つの解消、一つの低減、一つの補強〈過剰生産能力の解消、過剰在庫の解消、過剰債務の解消、コストの低減、脆弱部分の補強〉」)や環境対策が着実に進んでおり、産業構造が高度化しつつあること、さらに、GDP成長率に対する消費の寄与率が高まっており、経済の成長パターンが好ましい方向に転換しつつあることが報告から読みとれる。これらから、6.5%成長率を上回る可能性も十分期待できる。

 

 注目すべきは、新四大発明(高速鉄道網、モバイル決済〈アリペイ〉、シェアリングエコノミー、Eコマース)や人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)など新興産業の発展と対外展開の行方、さらに、次代の発展を担う人材の育成・確保についてである。「報告」では、こうした分野への政策的配慮と今後の発展方向がかなり具体的に示されている。

 

 「報告」では、その冒頭で中国経済の世界経済に占める割合が15%前後、世界経済の成長率に対する中国経済の寄与率が30%超(世界一)としている。このように中国経済の国際化が一段と進み、かつ、世界経済における中国のプレゼンスが高まる中、「報告」でも言及されている「一帯一路(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)」の推進や国際産能合作などを通じ、中国が世界とのウインウイン関係の構築でどのような手腕を見せるのか、世界は注目している。改革開放40周年の2018年はその行方をみる試金年といえよう。

 

人民中国インターネット版 201839

 

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