横浜国立大学名誉教授 村田忠禧

スリランカの港湾使用権の差し押さえは中国側が原因ではない、とのオーストラリアの研究が出ている。自国の力量を考え、返済能力を無視しなければ、99年に及ぶ港湾使用権の差し押さえは発生しなかっただろう。しかし逆に途中で計画をストップさせると、それまでの投資そのものが無駄になり、よりいっそうの赤字を作り出す恐れがある。
99年の使用権を取得してもそれは国家主権の譲渡ではない。また中国が港湾の管理をしているからといって、他国の船舶の使用を認めない、というようなことはない。
援助はあくまでもその国が自立するのを助けるためのもので、健全な経済建設を実現し、借款の返済能力を高め、港湾使用権をスリランカのもとに可能な限り早く戻ってくるよう、互いに努力し、協力すればよい。
かつて中国はソ連から多額の借款の供与を受けたが、1960年代前半という中国自身が非常に困窮していた時でありながら、ソ連へ全額返済した。その中国が「債務のわな」を仕掛けることは考えられない。
一帯一路日本研究センター代表、筑波大学大学院名誉教授 進藤榮一

国際社会からは、「一帯一路」は中国の「債務のわな」や「新植民地主義」ではないかとの声が聞かれます。これは、現実の国際感覚の無知であり情報操作だと思いますし、中国に対する見方の歪みを表していると思います。特に港湾施設に関してはそうした意見が多いですね。スリランカのハンバントタ港やパキスタンのグワダル港、ギリシャのピレウス港を中心に、中国企業の巨大港湾企業が進出していますが、それが独占的な権益を確保する新植民地主義ではないかというのが彼らの主張です。
しかし17年におけるスリランカの対外債務総額は518億㌦で、対中債務額はその10・6%の55億㌦に過ぎません。ハンバントタ港の建設債務は11億㌦で中国が経営権を取得するものとされています。このような具体的な数字を示さず、あたかも中国が途上国に借金を負わせ、その借金をかたに領土を取っていくのだというような議論を展開するのはいかがなものでしょうか。パキスタンやギリシャでも同じです。債務総額や港湾債務の割合などの「現実」をフェアに議論せず、「中国は四方に爪を伸ばしてユーラシア大陸を手にし、世界を支配しようとしている」という「中国の竜の爪論」のごとき言説ばかり論じるのはおかしい。(聞き手・構成=呉文欽)
人民中国インターネット版 2019年3月13日