第13期全国政治協商会議委員、中華日本学会会長・高洪=文

現在、世界は大きな変動期にある。突如襲ってきた新型コロナウイルス感染症という大きな試練を前に、各国の危機対応能力と国家間の協調対応が問われている。北半球は厳冬期も終わりに近いが、隣国同士である中日両国は、再び共に感染症の予防・抑制の大きな圧力に直面している。互いに助け合うという善隣友好の理念に基づき、積極的に連携して感染症と闘うことは、両国にとって喫緊の課題だ。
一方、新型コロナが発生して以来、中米関係の大きな変化により、中日関係も新たな正念場を迎えている。中日が生産チェーンとサプライチェーンの調整、操業・生産の再開、経済再生においてイノベーション協力を行うことは、次第に歴史的な必然となりつつある。
今、世界は新型コロナとの闘いの真っただ中と言える。感染拡大により、一部の人は国家の安全保障上の脅威を誇張しているが、中日両国は歴史的・文明的な視点から、「同舟共済」(同じ境遇の者同士が助け合う)の意味を理解し、感染症の予防・抑制やワクチンの開発、ウイルスの変異に関する研究、感染経路の追跡などにおいて、互いにノウハウを共有すべきだ。

第16回「北京-東京フォーラム」の北京会場(写真・沈暁寧/人民中国)
昨年末に開かれた「北京-東京フォーラム」の「公衆衛生分科会」で、中日の疾病対策の専門家と政府部門の関係者は胸襟を開いた交流を行った。そして、両国がより前向きな姿勢で連携して新型コロナに立ち向かい、互いに協力して両国やアジア、ひいては人類全体の「人類衛生健康共同体」を構築し、また最終的に「人類運命共同体」という共通認識に達すべきだとした。
社会・経済の面での新型コロナによる主な変化の一つは、世界経済の中心の加速化する移行だ。感染症が拡大する前、世界経済の中心はすでに東アジア地域へ移行する傾向が現われていた。感染拡大でこの流れに拍車がかかることが考えられる。その主な背景・理由として、世界の感染症対策と操業・生産の再開で、明らかに東アジアの各国・地域がより優れた成果を上げたことだ。
国際通貨基金(IMF)の昨年11月の予測によると、2020年の経済成長率は中国が1.9%、米国はマイナス4.3%、日本も同5.3%だった。一方で中国国家統計局の初期的計算によると、2020年の中国の経済成長率はすでに2.3%に達している。そうすると、今年の成長率が中国5.2%、米国3.1%、日本2.3%になるというIMFの予測のうち、中国については、もっと期待できそうだ。こうした状況は、明らかに中日両国のイノベーション協力に新たな可能性と必要性を提供している。
まず、中国の企業は破壊的イノベーションが特長で、日本の企業は持続的イノベーションに長けており、両国の産業イノベーションシステムと企業イノベーションモデルは高い相互補完性を持っている。中国はすでに多くの中日イノベーション協力モデル区を建設した。日本の企業や研究機関、研究者も中国と協力する強い意欲を示し、方針の転換と考え方の一新によって協力をさらに広げることができる。
次に、中日は同じまたは類似した戦略的課題に直面しており、歴史的・文明的視点からアジアの台頭を認識し、科学技術の革新が生み出す強力な推進力を生かし、コロナ後の世界秩序をいかに構築するかを共に考えるべきだ。
最後に、中日が高齢化の分野で幅広く交流し協力できることは、議論の余地がない。両国の政府や研究者、民間はいずれも協力を推進し、互いに学び合い、共通の市場を作ることを望んでいる。
前述に基づいて、今年、中日関係は次の3点で努力すべきだ。
第一に、世界が激動と変革を続ける大きな背景の中で、中日関係の持つ時代の価値と戦略的内容を引き続き充実させる。
第二に、両国関係は多くの課題を抱えているが、今後は相互理解と相互信頼を一層深め、歴史認識の問題と島々を巡る主権紛争などの食い違いを適切に処理した上で、互恵・ウインウインの実現を積極的に目指さねばならない。
第三に、来年の中日国交正常化50周年を契機に、中日関係を新たな段階に押し上げる。
今年はこのための力を蓄え、一歩一歩進めるよう努める年で、何もせず消極的に待つ年ではない。より広い大局的見地に立ち、高い視点で中日関係の現状を考え、着実に障害を取り除き、進む道を探る必要がある。その意味で、今年の中日関係は「任重くして道遠し」であり、二国間協力への努力も尽きることなく続くだろう。
人民中国インターネット版 2021年2月26日