王衆一=文
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第13期全国政協外事委員会委員、人民中国雑誌社総編集長 王衆一 |
2020年は、筆者のこれまでの人生の中で最も不確実性に満ち、最も劇的な一年だった。今、ひと言で総括するならば、私たちは百年来の大きな変動期にあるということだ。この1年間、思いも寄らない新型コロナウイルス感染症のまん延によって、多くの計画が狂い、人類の生活は変わり、世界も全く変わってしまった。
2020年は、中国と日本、そして世界もかつてなかった試練にさらされ、全人類は歴史的な岐路で選択を迫られた。
世界にまん延する感染症が多くの人々の命を奪ったことは、実に悲しく恐ろしいことだ。人類が団結して感染症と闘うべき肝心な時に、相互信頼の欠如による国家間の疑心や、自国の利益のために災いを他国に転嫁するようなやり方は、実に嘆かわしく懸念を抱かせる。また、一部の国では社会が人為的に分断され、感染拡大がさらに深刻化したのは大変痛ましい。
もちろん、落胆するニュースばかりではない。中日を例に挙げれば、昨年上半期に両国民が互いに助け合い、マスクを贈ったことや、「風月同天」の詩情を共有したこと、「和合(相愛)」の価値を改めて確認したこと、また「北京―東京フォーラム」で達したコンセンサスや、作文・漫画による青少年交流があり、増える一方の経済・貿易交流がある。こうした両国民による善意のこもったやりとりの情熱は、世論調査の冷たいデータより心の温もりを感じるし、また中日関係に希望があることを信じさせてくれる。
特に忘れられないのは、昨年の「北京-東京フォーラム」のことだ。公衆衛生分科会では、感染症対策について有識者たちが率直かつ建設的な善意の助言をし、さらにコンセンサスでは、双方とも感染症の共同対応と新しい年におけるワクチンの共有について互いの期待を述べた。
今年に入ると、程度は異なるが感染症の再拡大が起こっている。だが幸いなことに、中国を含む各国が開発したワクチンはすでに量産が開始されており、多くの国で実用段階に入っている。中日両国がさらに歩み寄り、ワクチンでの協力によって人類の感染症との闘いの新たな手本となることを願っている。
微信(ウイーチャット、中国版LINE)の動画をチェックすると、日本のテレビでは最近、中国の感染症対策に対する客観的な報道が多くなっていることに気付いた。これは、昨年の「北京-東京フォーラム」のメディア分科会で、両国メディアのプロフェッショナリズムの強化を巡る議論が行われ、そこでまかれた「種」が希望の苗として芽生えたということだと思う。今年も真実と善意を伝える報道の面で両国メディアがより多く交流し、相手国への国民感情が互いに歩み寄り、バランス良く好転するよう期待したい。
オンラインで行われた「悟空杯」中日韓青少年漫画コンテスト2020の開会式(写真・楊振生/人民中国)
その国民感情という両国関係の基盤を改善するために、青少年交流はとりわけ重要だ。当社が主催した「悟空杯」中日韓青少年漫画コンテスト2020は、近いうちに授賞式を行う予定だ。また、日本の若い世代の現代中国への認識をより正確に反映するために、今年実施するPanda杯全日本青年作文コンクールは、昨年よりアンケート調査の範囲を拡大する予定だ。
幸いなことに、人類は歴史的な変動期に直面するたびに、常に自らを調整し適応する知恵を持っている。科学技術は人類が未知に挑戦する中、絶えず新たなブレークスルー(突破)を成し遂げている。人工知能(AI)技術やビッグデータは、私たちの生活に大きな変化をもたらすとともに、感染症対策や今の社会に普遍的に存在する深刻なインボリューション(内向きの発展)の打破のために、新たな可能性をもたらすに相違ない。特に今回の感染症のまん延に対応して、人類は必ず社会ガバナンスの理念について大きな調整を行うだろう。
停滞を打ち破って進み、混乱を治める――という共通目標の実現のためには、中国と日本、また中国と世界が共に助け合って困難を乗り切り、運命共同体を目指して新たな前途を模索していくことが求められる。その意味で、私たちは自信を持って2021年を迎えた。「沈舟側畔千帆過、病樹前頭万木春」(沈みたる舟のたもとに千帆が過ぎ、病樹の先に万木春めく)の詩句が表すように、苦難を乗り越えれば明るい未来が待っているはずだ。
人民中国インターネット版 2021年3月2日