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日本の専門家が見る「両会」(3) 有識者が見る『政府活動報告』

 

貧困を脱し、責任ある大国の役割を果たす

伊佐進一 日本衆議院議員

私が財務大臣政務官をしていた2019年、地元大阪でG20が開催された。その場において、「質の高いインフラ投資に関する原則」を取りまとめた。今回の報告で「一帯一路」における「質の高い発展」を明記したことは、高く評価している。またこのG20では財務大臣と保健担当大臣の両者が参加する会合が初めて開催され、世界が直面するユニバーサルヘルスカバレッジを議題とした。中国が「健康中国」と銘打ち、農村も含めた治療と予防の連携を構築する取組みは、こうしたG20の意義にも沿うものだ。いずれも、今後の具体的な政策を注視している。

中国が直面する課題は、日本とも共通するものも多い。たとえば、若者の抱える「住宅難」である。この点についても、報告においては一歩踏み込んでいる。供給増や地価、住宅価格の安定を掲げており、中国人民の期待に応えられるよう願っている。

何よりも印象深いのは、中国がついに貧困から脱却したという宣言だ。以前、中国の内陸部を訪れた際に、貧困脱却に向け、個別訪問を含め丁寧な対応に地方政府が努力している姿を拝見した。大国となった中国の一挙手一投足に世界が注目している。ついに貧困を脱し、いよいよ責任ある大国として役割を果たしてゆくことを期待している。 

国民の生活本位に立脚、平和的富強国家が実現

西園寺一晃 東日本国際大学客員教授 

新型コロナ、中米対立、世界経済の混乱という厳しい状況の中、中国の全人代が開催された。「政府活動報告」には重要な内容が多いが、特に感銘を受けたのは、「報告」の中を貫いている「国民の生活本位」という考え方だ。政治(執政)の主な任務は二つである。一つは、国家の独立と主権領土を守ること、もう一つは国民の生命と財産を守り、国民生活を向上させることだ。

中国は基本的に貧困撲滅に成功したが、14億の多民族国民をまとめ、生活の向上を達成させることは至難の業である。ただ中国はこれで満足していない。国民の要求は、生活が安定し、不断に向上することだ。これに対応できるかどうかは、執政党、政府の存在意義に関わる問題である。

単に収入が増えただけで、幸福度が上がったとは言えない。収入の向上は基本だが、就職、教育、社会保障、各種サービス、高齢化対策、国民の健康など、多岐にわたる対策が功を奏し、法治が充実、民主建設が進展してこそ、国民は安心し、幸福感を持てる。

この「政府活動報告」は、これら多岐にわたる対策を事細かに、具体的に提起している。中国がこの方向に着実に前進し、成果を挙げれば、近い将来地球上に新しいタイプの「平和的富強国家」が実現するであろう。

コロナ危機を克服し、貧困削減に着実な成果

進藤榮一 筑波大学大学院名誉教授 

「政府活動報告」を長い歴史の中で読み解いたとき見えてくるのは、「報告」がコロナパンデミック「戦争」への中国の勝利宣言であり、同時に「戦後」構想を指し示している現実だ。

第一に、中国はコロナ危機を見事に克服し、実質経済成長目標を6%以上に設定するまでに至った現実。西側先進国が軒並みマイナス成長を記録しているにも関わらず、である。

第二に、中国は単にコロナ危機を克服しただけでなく、コロナであっても貧困削減に着実な成果を危機下で収め得た現実。特に新自由主義を導入した米欧日で、コロナで格差と分断を拡大させたのと好対照をなす。

第三に、それら中国型社会主義の成果が、同時に持続可能な地球環境の保全創出の「グリーン」化と表裏一体で進められている現実。

第四に、一連の内需拡大が「一帯一路」による外需拡大と相互循環をなしている現実。「双循環」の成果だ。ユーラシアからアフリカに至る投資と通商の推進強化と表裏をなしている。

かつての全ての新型ウイルス「戦争」がそうであったように、「戦争」の世界化は、既存の世界政治経済秩序の組み換えを促す。いま見えてくるのは、「パクスアメリカーナ」の終焉であり、「パクスアシアーナ」の台頭だ。

高齢化の課題に向き合い、健康中国の取り組みに尽力

伊藤洋平 認定NPO法人東京都日本中国友好協会理事長代行 

最も印象深いのは、 551万人の農村貧困人口と 52 の貧困県が全て貧困から脱却したという点である。このことは、中国の生活レベルの底上げが行われたことを表すとともに、鄧小平氏が唱えた先富論が現実化したことを表しているのではなかろうか。GDP成長率が6%以上を目標としていることからも、中国はますます豊かになっていくことが容易に想像できる。今後は、貧困撲滅における取り組みを中国国内だけでなく、海外にも展開し、世界の貧困撲滅に向けた動きとなっていくことを期待したい。

日本はかつて医療や介護費用の補助制度を充実させた。その結果、少子高齢化が進んだ現在、財政的に厳しい状況に至っている。中国も将来的に少子高齢化の課題に直面することが予想されるため、日本のこのような経験を活かしていただきたいと考えている。そういった点で、健康中国といった予防に関する取り組みに力を入れることは、持続可能性の観点からも有効的な取り組みである。健康でいることが医療費や介護費用を抑制することは明らかだが、日本ではまだ設けられていない、国民の健康増進を促す制度を中国が創設できたとしたら、非常にインパクトのあることになるのではないか。

 

関連リンク: http://www.peoplechina.com.cn/tjk/lh/lh2021/ttxw/202103/t20210307_800238975.html

 

 

人民中国インターネット版 202137

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