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日本の専門家が見る「両会」(5) 拓殖大学教授 岡田実(談)

 

SDGsが国際協力の鍵

中国の国際協力に注目

私はかつて日本国際協力機構(JICA)で長年にわたり仕事をし、国際開発と国際協力について研究をしてきた。したがって、今年の「両会」では、中米関係と国際協力、そしてポストコロナの世界を中国はどのように見ているのかについて、特に注目している。今年の1月に発表された白書「新時代の中国国際発展協力」には、中国の対外援助について詳しく記載されており、未来の展望として3点あげられていた。一つ目が、人類衛生健康共同体の構築である。二つ目が、国連の持続可能な開発のための2030アジェンダの推進と達成である。三つ目が、国際開発協力の能力の向上、つまり中国の対外援助の質の向上である。「両会」ではこれらの話題をめぐって、代表委員たちがどのような議論を交わし、ポストコロナにおける中国の国際協力と対外援助が今後どのように展開されるのか、注視している。

競争と協力が共存するアメリカの対中姿勢

気候変動、新型コロナウイルス感染症の流行など、国際協力が求められるグローバルイシューは山積している。新型コロナウイルスのワクチンを例にとっても、世界保健機関(WHO)は世界各国に平等にワクチンが普及するための「COVAX」を推進しており、中国はこのプロジェクトに積極的に関わっている。アメリカも、バイデン政権に変わってから、同プロジェクトへの協力を表明した。しかし、多くの発展途上国では、ワクチンの普及は依然として進んでいない。新型コロナウイルスの抑制には、間違いなく米中による更なる協力が求められる。

評価できるのは、米中の電話首脳会談が211日、中国では旧暦の大晦日にあたるこの日に、2時間近くにわたって行われたことだ。会談内容は全て公開されているわけではないが、恐らく両国首脳は対談のなかで、米中の間には競争だけでなく、協力の要素が必要だという認識が確認されたのではないかと考えている。

現段階では、バイデン政権はまだ対中政策を練っている段階だ。トランプ前大統領の人気はいまだに根強いことを考えると、バイデン大統領になったからといってこれまでの強硬な対中政策を急に変えることも難しいだろう。当面は現状維持でいくのではないかと思う。一方で、アメリカも中国への過度な制裁を続けることが、自国にとってデメリットであることに気が付いているだろう。科学技術分野で中国を排除してしまうと、そのこと自体が中国独自の研究開発を促し、やがてアメリカの最先端科学技術の分野における優勢を脅かしかねない。

首脳会談には、米中関係が完全に破綻することは避けたいという思いが強く表れている。今後、米中は協力できる分野を探し、できる限り対話の機会をつくっていくと私は見ている。アメリカの対中政策は、同様に競争と協力の相反する二つの要素が絡み合いながら、その時々の状況に応じて、さまざまな政策が立ち上がってくるだろう。

SDGsが国際協力の鍵

アメリカの対中姿勢には競争と協力が共存するという前提であれば、SDGs(持続可能な開発目標)に含まれているような、貧困問題や環境問題といったさまざまな分野において、米中は国際協力を展開していけるはずだ。

また、米中摩擦のもとで日本が果たせる役割については、近年国際関係を語る上で、しばしば言及される問題である。実際に、昨年に言論NPOが実施した世論調査の「米中対立において日本はどういう立ち位置であるべきか」という質問には、日本人の58.4%が「どちらかにつくのではなく、世界の協力発展のために努力すべき」と回答した。

日本の外交は基本的にはアメリカを基軸として展開されているものの、2018年の安倍晋三前首相の訪中の際には、日本政府は「競争から協力へ」という原則を打ち出した。今後、米中の間に、日本はさらに多くの対話の機会を提供すべきであり、世論調査の民意が反映しているように、気候変動や感染症、経済発展といった日米中の三カ国がともに興味を持ち、なおかつSDGsにも含まれているこれらの領域で、交流と協力を促進していくべきである。

 

関連リンク: http://www.peoplechina.com.cn/tjk/lh/lh2021/ttxw/202103/t20210310_800239700.html

 

人民中国インターネット版 2021310

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