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雷後興委員 シェ族出身医師として伝統医薬の保護に貢献

<政協>委員に聞く(2)雷後興 シェ族出身医師として伝統医薬の保護に貢献  

 中国人民政治協商会議全国委員会の委員には、さまざまな分野で活躍する専門家が大勢います。委員一人ひとりが持つ意見や関心を、ピックアップしてご紹介します。 

 今回は、浙江省麗水市中医院(中医学病院)の名誉院長である雷後興委員を取り上げます。

 雷委員は小児科医として40年以上にわたり働く中で、心身症(心的ストレスなどの影響が身体に現れる病態)を患う子どもの急激な増加に気づきました。その大きな要因の一つは、学校の成績が重視されすぎる環境にあるとされています。また、両親よりも祖父母に育てられる時間が長い場合、特に留守児童(親が出稼ぎに出て農村に残される子ども)の境遇にある場合は、子どもの心の健全な成長が大きく妨げられるとされます。しかし、以前まではこの問題に対する社会からの認識は薄いものでした。

 「中国青年発展報告」によりますと、中国には17歳未満の子どものうち约3000万人が何らかの精神症状や行動障害を抱えています。雷委員の患者にも、不安障害やうつ病、ADHD、不眠症、パニック障害、強迫性障害の子どもが増えてきました。これを受けて、雷委員は日々の診療からデータを集めるようになり、患者の家庭や学校への訪問調査も始めました。そして、2017年の政協会議で「子どもの心に乳幼児の段階から注目を」と題する提案を、2019年には「留守児童のメンタルヘルス」と題する提案を提出し、大きな反響を呼びました。

<政協>委員に聞く(1)雷後興 子どもの心を守る小児科医 

 これらの提案を基として2019年12月、国家衛生健康委員会とその他12部門によって「健康中国行動——児童青少年のメンタルヘルス行動方案(2019—2022年)」が制定されるに至りました。この行動計画は、学校、社区(コミュニティ)、メディア、医療機関など、子どもの健全な成長に資する環境整備の目標を示しています。さらに、2021年10月には、この行動計画の内容をより充実させたバージョンが制定されています。

 これまでの成果を踏まえて、雷委員は「子どものメンタルヘルスを守るための道のりはまだまだ長い。しかし、政府や社会、学校、親の理解があれば必ず改善されるだろう」と語っています。

 全国政協は、中国共産党、8つの民主党派、無党派人士、人民団体、少数民族、および経済、社会、文化など、34分野に分けられており、委員はそのいずれかに所属しています。医療関係者は「医薬衛生」の分野に所属するのが一般的ですが、雷委員は実は「少数民族」の分野の委員です。それは、彼がシェ族(畲族)の出身だからです。 

 シェ族は中国東南部の沿海地区を中心に分布しています。シェ族が扱う伝統的な医薬品には薬草を煎じて服用するものが多いですが、患部に塗布するタイプの処方も比較的多く、全体の1/4を占めていることが特徴です。また、簡単で効果が高く、コストが低く抑えられるとされていますが、西洋医学の普及に伴って廃れていきました。 

 雷委員はこのシェ族の医薬品に強い関心を持ち、その研究・開発と保護に力を入れてきました。2007年に「シェ族医薬に関する研究と開発」と題する研究論文を発表しました。また、書籍『中国のシェ族医薬学』を編集し、シェ族の医薬を後世の人へ伝えていくうえでの多大な貢献をしました。 

 政協委員としての提案にも、少数民族医薬の研究開発や、中医薬法の普及といった内容を盛り込んできました。今年も「公共広告による『中医薬法』の宣伝と普及」や「民族医学のさらなる研究開発と利用」といった提案を用意しています。また、小児科医師として「幼児養育における社会的サポート」について取り上げているほか、「女性の権利」「高齢者医療」など、幅広いテーマの提案を行っています。 

 雷委員は2008年に全国政協委員に選ばれ、これまでの14年間で117件の提案を行ってきました。(取材:王秀閣) 

 中国国際放送局日本語部より 

 

 

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