中日関係の新局面開拓のために提言

1026日、第17回「北京―東京フォーラム」でメディア、デジタル、経済、安全保障の四つの分科会が開かれた。各分野から参加した中日のパネリストたちは各分科会のテーマについて踏み込んだ議論を行った。率直な対話の中で双方は相互理解を深め、共通認識を形成し、新時代の要求に合った中日関係の新たな局面を切り開くために、各分野の協力における新たなルートを探した。

 

 

北京(上)と東京でのメディア分科会の様子

メディア報道は善意をもって客観的かつ全面的に

メディア分科会では、中日のメディア関係者や研究者11人が、「メディアは中日関係の将来と可能性をどう見ているか」というテーマを巡って積極的な議論と率直な交流を行った。

メディアは中日の両国民の理解を深める重要なチャネルだ。メディアが発揮すべき役割について、パネリストたちは次のように見解を一致させた。双方は両国のメディアの性質や価値観の違いを理解する必要があるし、共通するボトムラインを守らなければならない。つまり、報道は客観的かつ全面的で善意のあるものでなければならない。

元国務院新聞弁公室主任の趙啓正氏は次のように強調した。メディアにはそれぞれ立場がある。その立場とは自国を愛し、自民族を愛するということだ。この立場の下、報道には選択性がおのずと生じるが、どのような選び方であっても、社会に反し事実に反する内容を絶対に取り入れてはならない。

中国社会科学院日本研究所研究員の金瑩氏は次のような考えを示した。メディアの報道は自由だが、この自由は責任を伴い、国と社会全体を考慮する視点に立たなければならない。自由な報道も理性と原則があり、中日関係の良好かつ安定的な発展に役立つものでなければならない。

人民中国雑誌社の王衆一総編集長は次のように述べた。両国のメディアはさまざまな角度から説明と分析をすることで、出来事や話題を国民により全面的かつ詳しく理解してもらう責任がある。デリケートな話題にのみ焦点を当てるのでは問題の解決に役立つどころか、かえって両国民にさらなる懸念を抱かせる。メディアは善意の視点から建設的な意見を出し、実行可能な解決方法を探るべきだ。

元中国国際放送副編集長の馬為公氏は、東京オリンピック期間中に中国メディアが日本側の取り組みを報道したことと、日本メディアが雲南省の象の北上を報道したことを例に出してこう強調した。メディアはさらに視野を広げ、より多角的な報道で相手国のもっと多くの情報を国民に伝えなければならない。

朝日新聞社論説委員の古谷浩一氏とNHKアナウンス室チーフアナウンサーの鎌倉千秋氏は共に次のような考えを示した。中国の発展は目覚ましいものであり、直接体験や現地取材をしなければ客観的で正しい判断や報道はできず、中国に対する報道は理解という基礎の上に築かれるべきだ。

 

 

北京(上)と東京でのデジタル分科会の様子

 

コロナ下で進んだデータの共有

今年のデジタル分科会のテーマには「デジタル経済」と「人工知能」(AI)という二つのキーワードがあった。広義のデジタル経済は、新型コロナウイルス感染症の流行という背景の下で中日経済の回復を実現した担い手であり、両国の将来の実務協力における着眼点と足がかりでもある。科技日報社総編集長の許志龍氏はこう述べた。アジアは世界のデジタル化の加速において重要なエリアになり、中国や日本などのデジタルガバナンス経験は双方の踏み込んだ実務協力の実践的な基礎になる。

これに対し、PingCAP(平凱星辰)テクノロジー副総裁の劉松氏は、オープンソースは互いの警戒心を低くし、より信頼し連携できるシステムを形成すると述べた。さらに中国企業がインターネットシンキングを活用して省エネや二酸化炭素排出量の削減にネットユーザーたちを参加させた「アントフォレスト」プロジェクトを取り上げ、将来は中日間でこのようなメカニズムを創造的につくり、消費者一人一人が商品購入時に二酸化炭素の排出とその削減を考えるようにさせることができるだろうと語った。日本側はこれに対して賛同した。

過去2回のデジタル分科会の議論で、中国側パネリストが前向きな態度を示したのとは対照的に、日本側パネリストはデータセキュリティーとビッグデータ活用の問題について慎重な態度を見せていた。今年、株式会社東芝執行役上席常務最高デジタル責任者の島田太郎氏は次のように述べた。新型コロナショックは2011年の東日本大震災を上回った。過去、多くの企業がデータの活用に対して懐疑的だったが、現在はデータの共有が全員の共通認識になりつつある。「私たちはデータを活用してデータコミュニティーをつくるチャンスを迎えており、災い転じて福となすべきである。新型コロナへの対応が私たちのデータの共有を推し進めたのだ」

この他、ネットイース(網易)副総裁の龐大智氏、アイフライテック(科大訊飛)上級副総裁の段大為氏、センスタイム(商湯科技)副総裁の史軍氏、GTCOMテクノロジー副董事長の于洋氏は、企業の観点からコンピューターゲーム、スマート医療、翻訳、スマート交通など多くのシーンにおける将来のAIの活用の可能性を日本側と検討した。

 

 

北京(上)と東京での経済分科会の様子

 

経済協力の新たなチャンスを探る

経済分科会では、中日のパネリストは「自由経済の修復と世界やアジアの経済回復をどう進めるか」というテーマを巡って活発な議論を行った。中日両国は世界の主要経済国だ。新型コロナが収まっておらず、世界経済が大きな試練にさらされている現在、両国の経済貿易協力は新たなチャンスとチャレンジに直面している。双方は次のように考えを一致させた。両国は経済貿易分野で幅広い共通利益と相互補完性を有するほか、気候変動や高齢化社会の対応、二酸化炭素排出量削減目標の達成など人類が共に抱える課題でも大きな協力の潜在力を持っている。

北京中日イノベーション協同モデル区運営会社―北京大興国際ビジネスサービス有限会社常務副総経理の劉清華氏は次のような考えを述べた。新型コロナの影響で、国際貿易の枠組みの再構築が加速している。こうした状況の下で、各国が協力を強化し、貿易の形式とモデルを革新し、新時代の要求に合ったグローバルな自由貿易体制を構築することが差し迫っている。当モデル区は、中日経済貿易協力の強化を主な取り組みとし、制度刷新や人材交流、第三国市場での協力を推し進め、国際的なイノベーション協力と産業協力を促し、「双循環」(国内国際の二つの循環)という新たな発展構造により良く溶け込み、世界経済の繁栄と発展に貢献することを望んでいる。

そのほか、中国のCPTPP加入申請という日本のパネリストが関心を持つ議題について、中国国際経済交流センターシニア専門家諮問委員会委員の魏建国氏は次のように述べた。CPTPP加入申請は中国が十分に考慮した上での決定であり、場当たり的な意思決定ではない。CPTPP加入条件は相対的に厳しいが、これはまさに中国が国際基準に照らし合わせて取り組むことを反映している。中国は開放的な姿勢を貫き、各国と共に協力を行いウインウインを実現したい。今後、中国はビジネス環境をさらに最適化し、開放をさらに進める。日本がこのチャンスを捉え、両国の共同発展を促すよう望んでいる。

また、パネリストは第三国市場や感染症対策、金融、介護医療などの分野での協力について議論を行った。

 

 

北京(上)と東京での安全保障分科会の様子

 

ハイレベルの安全保障対話後押し

安全保障分科会では、中日のパネリスト12人が「アジアの紛争回避と平和秩序の実現に向けた中日協力」を巡って、交流と議論を積極的に行った。双方とも中日安全保障対話の推進、相互理解の増進を強く望んだ。

中国のパネリストは次のような考えを述べた。現在、中日両国は危機管理メカニズムの構築においてまだ遅れをとっており、ハイレベルの危機下の連絡メカニズムや海空行為準則、重大な軍事行動の相互通報メカニズムをいち早く構築し、安全保障対話の回復強化に共に取り組むべきだ。中国社会科学院日本研究所副所長の呉懐中氏は、双方はどんな立場でも、率直な交流を行い、誤解誤った判断を避けることが非常に重要で、ハイレベルの防衛対話をできる限り早く回復し強化すべきであり、岸田首相の就任が契機になればと述べた。

日本のパネリストも安全保障分野での中日交流が中米両国に遅れをとっていることを意識し、中日政府がいち早く行動してハイレベルの安全保障対話を推進することを強く望んでいる。元自衛艦隊司令官の香田洋二氏は十数年前の交流イベントで中国の海軍将校と杯を交わし、忌憚なく話し合った思い出を振り返り、このような交流が再開できるよう期待を寄せた。

双方のパネリストは人工知能やバイオテクノロジー、サイバー、宇宙などの分野の新技術に伴う安全保障リスクを共に予防することで意見が一致し、制限をかけないとトラブルを引き起こす恐れがあるため、それを今後両国の安全保障対話の重点にすべきだと考えた。中国のパネリストは次のような考えを示した。一部の問題はすでに国際社会のアジェンダに盛り込まれた、意見の食い違いでなかなか進んでいない。中日は軍事分野の新技術活用で交流を深め、共通認識に達すべきだ。これは両国にとっても有利だ。

また、パネリストは今年になってからの地域安全保障のホットな話題について意見を交わした。参考消息社参考シンクタンク主任の劉華氏はこう述べた。実際の結果から見て、この数年間日本の一部の行動が、安全保障上の考慮事項に見えるが、かえってそれによって自国の安全保障環境は厳しさを増した。日本の皆さんにとって考える価値のあることだ。

人民中国インターネット版 2021112

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