大海に乗り出した漁師

袁舒=文

呉維春=写真

 1970年代、寧波市北西部に位置する余姚市の河姆渡村で、約7000年前の新石器時代の遺跡が発見された。出土した多くの木製の櫂や土器の釜、イネや魚の骨などから、当時すでに舟が重要な移動手段となり、河姆渡の人々は米や魚を食べていたことが分かる。舟で海や川、湖に乗り出し、魚やエビを捕るのが彼らの普段の生活だった。

 最新の考古学の発見では、河姆渡遺跡からほど近い井頭山遺跡は、中国沿海部で最も年代が古い先史時代の遺跡の一つであり、河姆渡文化の歴史からさらに1000年もさかのぼる遺跡であることが分かっている。専門家の中には、「井頭山一帯に住む祖先は、中国沿海部で最初の漁民である可能性が高く、中国南東部の沿岸で最も早く海洋文化を生み出した」と見る人もいる。

 海辺近くの寧波は、古くから漁業の伝統がある。寧波の南東に位置する象山県の石浦漁港古城は、今から600年以上前の1387年に建設されたもので、背後に山、前面は海で、山が迫った漁港特有の風景が広がる。

 旧市街にはたくさんの古風な旧宅が残り、石畳の道の上には色とりどりの「魚灯」(魚の形をしたちょうちん)が掲げられ、海産物を売る小さな店が軒を連ねている。旧市街の目抜き通りは、よく保存された商店街で、通り沿いの木造家屋は鉢植えの植物や貝殻が思いのままに飾られている。この通りは漁港のすぐそばで、波止場には大小さまざまな漁船が停泊している。

 象山の漁師たちには、古くから「開洋」(海開き)と「謝洋」(海への感謝)の風習がある。毎年9月中旬に石浦漁港では盛大な「中国開漁祭り」が開かれ、海開き、放流、出港の儀式が行われる。人々は漁師を海に歓送し、航海の無事と豊漁を祈願する。この時、何百隻もの漁船が一斉に出港し海に向かう光景は、実に壮観だ。

 

寧波市象山県の石浦漁港で行われる開漁祭り。休漁期が終わる9月中旬、何百隻もの漁船がアーチ型の銅瓦門大橋をくぐって出漁する