新型コロナウイルス感染拡大 中国経済の行方は?

 

新型コロナウイルス(COVIT-19)感染拡大の影響を受けて世界経済が大きく揺れ動くなかで、中国経済の先行きは特に多くの注目を集めている。新型コロナウイルスによる経済への影響と、新型コロナウイルス感染防止のために中日両国はどのように協力すべきかを、在中国日本大使館経済部書記官や日銀北京事務所長を歴任し、中国経済事情に詳しいキヤノングローバル戦略研究所の瀬口清之研究主幹に聞いた。

——新型肺炎による経済への影響についてどう見ていますか。

今回の新型コロナウイルスは、基本的には大きな自然災害と同じと私は捉えていて、ウイルスさえ克服できれば、経済は比較的短期間に正常化に向かう可能性が高いのではないかと思っています。

普通の景気循環で、例えばバブルが崩壊したりすると、あらゆる企業のバランスシートが破壊的に痛みます。すると、よほど大きな財政支援や金融支援を行わない限り、経済は元に戻っていきませんし、それには非常に時間がかかります。ところが今回の問題は、単に1ヶ月間ほど経済が止まっているわけですから、金融がきちんとつながりさえすれば、企業の経済活動がスムーズに元に戻っていく可能性が十分あるのではと思います。しかも、金融さえつながれば、元々溜まっていた需要が一気に吹き出していきますから、それが経済の回復力にもつながっていくのではないかと思っています。

現在中国の三大エンジンになっている「京津冀」、「長三角」、「珠三角」は、比較的立ち上がりが早く、回復に向かっています。エンジンがきちんと立ち上がっていけば、中国経済は比較的順調に回復に向かえます。ただし上期は、非常に厳しいと思います。下期で急速に立ち上がっていく可能性があるのではと私は思っています。

——中国経済のダメージを最小限に留めるためには、中国政府はどのような対策を取るべきでしょうか。

まずは金融です。経済が止まっていても、企業のバランスシートなどはさほど傷んでいませんから、お金さえ回れば徐々に戻っていくと思います。しかし金融機関からの借入には満期がありますから、満期が来たときにお金を返さなければ倒産します。倒産してしまうと、生産も消費も何も戻らなくなりますので、倒産させないようにするのが非常に重要です。人民銀行は相当早い時期からその点に気がついていて、一兆7千億元の緊急融資を発表しています。これからも必要があればその金額を上積みしていくと思います。

それでも中小企業の経営が非常に難しくなるケースが出てくる可能性はあると思います。それが金融だけでつながればいいのですが、こうした状況になってくると、中小企業は危ないと金融機関が判断し、リスクを恐れて資金融資を止めてしまう可能性があると思います。

その防止策として、中小企業に貸したお金が返ってこない時に、元本を政府が保障するという手があります。日本では信用保証制度と呼んでおり、制度として定着しています。日本では貸したお金が返ってこない時に、元本の7〜8割を政府が補償しています。1997年の金融危機では、100%補償しました。つまり、金利以外は全て政府の補償です。こうすることで、銀行は安心して貸すことができるのです。金融危機の際には2兆円ほどの財源を使い、100兆円ほどの融資を上積みしたと思います。これによって多くの中小企業が救済された事例がありましたので、今回は中国も準備をしておいた方がいいかもしれません。

——中日間で、新型コロナウイルス感染拡大防止のためにどのような協力ができると思いますか

OECDのパリの本部ビルは現在、アジア人全員立入禁止の措置をとっています。彼らにとっては、日本と中国と韓国の区別がないのです。そうした現状を見る限りでは、やはり日本と中国と韓国がお互い助け合い、何とか生き残っていく方法を考えないといけないと思います。

私は、コロナウイルス発生後の日本と中国が今、心と心で応援しあっているという非常に大きな事実を、見逃してはならないと思っています。当初は日本が中国の方々を非常に心配し、「頑張れ中国」「頑張れ武漢」と言っていましたが、今は逆に中国の方から「頑張れ日本」と言っていただき、日中ともども、心のつながりを感じている人が増えてきていることが感じられます。お互いの国が苦しい状況だからこそ応援しあう―これが真の友情であり、本当の友好だと思います。これを国同士が続け、さらに国民同士が続けることが非常に重要でしょう。

 

人民中国インターネット版 2020年3月10日

 

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