危機で友好の基盤固めよ

 

中国社会科学院日本研究所研究員 金瑩=文

新型肺炎は年初の爆発的な感染拡大以来、人々の想像を超える速度やルートでまん延し、収束のめどは今も立っていない。新型肺炎の流行が世界に与えた影響を判断するのは時期尚早だと言える。しかし中日関係においては、大部分の人が次のような確定的な評価を受け入れることができるだろう。それはすなわち、今回の新型肺炎により、両国および両国民がお互いの切っても切れない関係を確かに認識し、「ポスト危機時代」において中日が友好と協力を強化する重要なきっかけを提供してくれたというものだ。

三つの分野で進展

新型肺炎対策を巡る調整と協力について、中日は三つの分野における取り組みが国際社会で十分に肯定されるケースになった。

まずは、政治・社会協力と官民共同体制により、相手側にできる限りの支援を提供したことだ。1月末、中国の新型肺炎情勢が悪化し、医療物資が緊迫しつつあった時、日本は中国に同情し救いの手を差し伸べた。自国でも感染対策用品が不足する可能性がある中で、政府や地方自治体、非営利団体、企業、個人らがさまざまな方法で中国へ支援物資を送った。その後、日本が新型肺炎対策の正念場を迎えた際、中国はその恩に報いるため、各種ルートを通じて何度も日本に援助を提供した。中日間は互いの援助に感謝し、物資を提供し合う戦略的援助交流のみならず、国境における通航や共同予防・抑制、新型肺炎情報の共有、ウイルス研究などの分野で協力を行い、合理的で効果的な感染拡大防止のための交流メカニズムを構築した。

次に、双方が共に文化的で調和の取れた社会世論をつくりあげ、新型肺炎と闘う人々の心理的プレッシャーを和らげ、精神的に慰めたことだ。新型肺炎の爆発的な感染拡大後、中国の新型肺炎対策に関する日本メディアの報道と評価は基本的に客観的で肯定的なものであった。日本の人々が思いやりや配慮を見せたことは、極めて高く評価されるべきものだ。武漢封鎖が行われたばかりの頃、多くの在日華人は当時中国において極度の品不足に陥っていたマスクを買って、国内の家族や友人に送ろうとした。こうした状況であっても、多くの日本の店舗はこれに乗じてマスクを値上げすることもなく、逆に値段を下げ、さらには中国の購入者に無料でマスクを提供する店すらあった。自民党は国会議員に中国への寄付を呼び掛けた。日本の一部の学校では、子どもに中国や武漢で生活している人たちに同情し、失礼な言論を慎むよう教育するようにと保護者に通知を出した。日本社会の全体を見れば、一部に中国を恨み嘲る声もあったかもしれないが、それは「頑張れ武漢」「頑張れ中国」という一般世論の中に埋没した。日本の善意に対し、中国の政府も国民もとても感動し、日本側が苦境に陥った際には同じように迅速かつ積極的な反応を示した。例えば2月にクルーズ船ダイヤモンドプリンセス号の集団感染の状況が緊迫し、東京オリンピックの期日通りの開催に懸念の声が上がると、中国政府と国民は積極的に防疫物資を提供した。世論もまた理解・同情・努力によって共に困難を克服しようという積極的な声が主流となり、相手の立場になって考えて行動した。中国政府と社会は一貫して日本側の必要に応じてできる限りの援助を提供しようとし、日本側が無事にオリンピックを開催できるよう支持することを明確に示した。善意と同情が{しんらつ}辛辣な皮肉と冷淡な傍観に取って代わり、今回の中日の新型肺炎に関する世論の主流となって、両国および両国民に団結と協力によって困難に打ち勝つプラスエネルギーを注入した。

最後に、さまざまな詩句によって気持ちを表すことで、中日文化共同体の新たな局面が切り開かれたことだ。2月初め、漢語水平考試(HSK)日本事務局が送った支援物資の段ボールに添えられていた「山川異域,風月同天」という漢詩が、多くの中国人を感動させた。この感動は日本の友人による気前の良い寄付だけでなく、中日文化交流史の記憶がよみがえったことに対するものでもあった。約1300年前に日本から贈られたこの言葉に感動した鑑真和上は、幾多の困難を乗り越えて日本に到達して仏教を広めた。そしていま、日本から来た物資に貼られた漢詩が、時空を超えて中国人に再び苦境の際の友情のありがたさを感じさせたのだ。その後、中国もまた日本のやり方を真似て、他国に支援物資を提供する際には相手方の文化や伝統に合わせ、真心を込めて美しい詩句を選んで添えるようになった。3月に中国がイタリアに防疫物資を提供した際、古代ローマの哲学者セネカの「われわれは同じ海の波、同じ木の葉、同じ庭の花である」という言葉をイタリア語と英語で添えた。「風月同天」や「同じ海の波」という詩句は、より多くの人々に国家や文化の隔たりを超えさせ、感染が拡大するこの非常時に人類は運命を共にしているという強烈な共感を呼び起こさせ、世界の新型肺炎対策などの分野でより緊密な協力を推進するだろう。

痛みをバネにする

客観的にみれば、安全に対する新たな脅威や国際関係における段階的突発事件としての新型肺炎は、中日の国際協力・国家間関係の改善に対して独立した作用はあまり持っていない。中日関係の改善は両国のより根本的な戦略的関係に左右される。また、中日両国がここ数年間で関係の安定と改善を維持しているという基礎の上に、新型肺炎による「災い」が協力・ウインウインという「福」となり、新型肺炎という「危機」が双方の社会の心理的距離を縮める「チャンス」となり、他人を理解して心配する共感の気持ちが生まれたことは、不幸中の幸いだといえる。「山川異域,風月同天」という言葉が持つ情緒や道理は、災難が降りかかった人々に感動や慰めを与えてくれるだけでなく、災難を乗り越えて今後さまざまな危機や試練に直面する人々に知恵や啓示を与えてくれる。東洋文化の代表として、中国と日本が今回の新型肺炎後も手を携えて進み、儒家の倫理と仏教の知恵によって世界の価値体系の再構築に貢献することになれば、今回の新型肺炎が人類に残した思いがけない補償と収穫であるといえるだろう。

 

人民中国インターネット版 2020年4月4日

 

人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850