コロナ後の中日韓協力推進を

 

中国社会科学院日本研究所所長 楊伯江

新型コロナウイルスによる肺炎はすでに現在の国家間の関係、ひいては国際的な枠組みや秩序に影響を与える重大な要因になった。感染症の波及範囲は広く、対応の難度は高く、ダメージの程度は大きく、回復時間は長いため、地域情勢と世界経済に衝撃を与え、国家、ひいては全世界の安定を脅かす複合的な結果を生み出すことは十分考えられる。時間の縦軸から見ると、今回の感染症は「過去100年になかった大変動」の進行過程で起きており、歴史の転換点になるかもしれない。

感染症の衝撃の下でグローバル化の大きなすう勢が逆転することはあり得ないが、世界や地域のサプライチェーンは再構築に直面し、世界の貿易投資規模も収縮するだろう。

「ポストコロナ」段階の国際関係はそれ以前の情勢の延長線上で引き続き推し進められる。最先端技術やルール、スタンダードを巡る争いは大国の戦略的駆け引きの焦点になるだろう。安全保障問題に対する日米欧の重視度は日増しに高まり、しかもいっそう経済問題と科学技術問題を国家の安全保障問題と結び付けて考慮するようになるだろう。これと同時に、中米両国の戦略的駆け引きが持続的に激化するかもしれない。トランプ米大統領の保護貿易主義政策は必然的に強化され、多国間主義に対する攻撃は強まるだろう。

一方、地域協力と経済一体化が促進される可能性がある。ウイルスの襲撃に国境は関係ないが、地域的な特徴は備えている。生産拠点と消費市場の間の距離が遠ければ遠いほど、また立地が分散していればしているほど、リスクがますます大きくなるということだ。このため、国際協力はいっそう地理的、地政学的な要素を考慮して進められるだろう。海外投資を進める各国企業は経営の重点をより自国本土に近い場所に置くかもしれない。

日韓などの国にとって、産業チェーンの全てを自国内に配置するのは恐らく難しく、その周辺、特に北東アジア地域に頼って調整を進めるほかない。これにより、北東アジア地域内の貿易の比重が高まり、地域内の国家間の経済的依存度はいっそう高まるだろう。

今回の感染症が拡大する中、欧州連合(EU)や東アジア(北東アジア、東南アジア)、北米の国家の政府と大衆は反応と対策において明らかに異なっていた。感染症への対応はある特定地域の文化的共通性を反映しており、欧米のいわゆる「道具的合理性」の思考と比べ、東アジア国家の感染症対策は「人本主義」の価値観念を体現していた。これらの文化的共通性は地域協力をさらに強化する社会的、文化的な基盤になるかもしれない。

今回の感染症の急速な感染拡大と各国の対応は北東アジアの地域化発展の道筋と方式に啓示を与えた。感染症の予防抑制におけるEUの苦境は、その一体化モデルの問題、特に一体化した経済社会政策と国家主権の間の矛盾を反映していた。この角度から見ると、北東アジア地域は権力ではなく、ガバナンスを導きとする地域秩序を構築すべきだ。

従って、中日韓は北東アジアを重点として、進んで地域のつながりと地域経済一体化を推進すべきだ。ガバナンス面の協力を通じて北東アジアの地域経済一体化と地域秩序の転換を推進するには、「地域統合」のEUモデルを踏襲して強行するのではなく、東南アジア諸国連合(ASEAN)モデルを採用するのがよりふさわしい。すなわち、重大な意思決定は地域組織レベルではなく、国家レベルで下すということだ。北東アジアが地域協力を強化し、ガバナンス面の協力によって地域経済一体化と地域秩序の転換を推進する鍵は、「柔軟な多国間協調主義」の原則を実行し、「ストックの最適化、変数の改善」の基本思想を堅持し、基本から少しずつ、順を追って進めるという実際の進行手順を模索することだ。

「ポストコロナ」段階で中日関係は依然として協力と競争の併存する「新常態(ニューノーマル)」にあるだろう。中日関係は持続的に改善するが、構造的な齟齬は短期的には解消しにくい。複雑に錯綜した局面に向き合い、中国は「急ぐ」ことだけでなく、「安定させる」ことも必要とし、両者の関係を弁証的にうまく処理しなければならない。やるべきことは急いでやり、自発的に成果を挙げ、歩調を合わせて協力し、一歩進んで2国間関係によって周辺を導くよう推し進めなければならない。しかし、全ては着実な研究と科学的な検討判断の基礎の上に打ち立てなければならず、目標設定は合理的で、プランは実現可能性を備えていなければならず、期待を検討判断の代わりにしてはならず、都合の良い願望を客観的分析の代わりにしてはならない。そうしてこそ中日関係の持続可能で安定した発展を本当の意味で実現できる。

人民中国インターネット版 2020429

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