ウルムチで出会った温もり
 

それはウルムチでの出来事だ。去年の10月私は、国慶節を利用して1人で新疆ウイグル自治区のウルムチへ旅行した。旅行3日目に私は天山天池という場所に訪れた。ウルムチにはまだ地下鉄が通っておらず、タクシーを利用するにも1人だと割高でやむを得ずツアーに参加することにした。

早朝私はタクシーでツアーのバス乗り場まで行った。少し早めに着いたのでその場でバスを待っていた。周りを見る限りツアー客はみな団体で参加していて、1人で参加しているのはどうやら自分だけのようだ。私はそそくさとバスに乗り込み、窓際の席に座った。少ししていると隣におばさんが1人乗ってきた。

時間になりバスが出発した。少し走るとガイドの方が説明を始めた。ガイドの方の話のスピードは決して速くはない、しかし単語がわからない。頼れるのは自分の耳だけだと、とにかく必死にガイドさんの話に耳を傾けていると

 「ねぇ、あなたはどうするの?」

 という声が隣から聞こえた。

 「もしかして1人?」

 と隣に座っていたおばさんが声をかけてくれた。私はおばさんに私が日本人であることを伝え、先ほどの説明をもう一度してもらった。どうやらこのツアーにはABの2つの選択があり、要は船に乗るか乗らないかの違いなのだが、値段がAB2倍違った。どうしようか迷っているとそのおばさんが、

 「よかったら、私たちと一緒に行動しよう!」

 一瞬私の胸はその驚きと嬉しさに「?!」となった。なぜかとても中国感を感じた。そのおばさんは江西省から老板(ラオバン)と同僚たちと遊びに来ていたらしく、すぐにそのおばさんは後ろのほうに座っていた老板と同僚たちに私のことを伝えた。

老板はこっちにやって来ると、私に向かって「せっかく日本から来たし、船に乗ろう。お金は出してあげるから。」と言ってくれた。さすがに自分の費用は自分で出すべきだと、お金は自分で出すと伝えた。しかし結局老板は私の分まで出してくれた。私は感動のあまりそのバスの中で泣いてしまった。老板になぜ赤の他人である私にこんなにも優しくしてくれるのかと聞いた。彼は「同じ人間でしょ。それに若い外国人が1人でこんなところまで来るなんて簡単じゃないよ。」と答えた。

ツアー中彼らは私の中国語に関して発音や語彙力の指摘をしてくれた。学校の先生は私の中国語を褒めるが、彼らは違った。心を鬼にして私に接してくれた。正直、私は心が折れそうになった。しかし、私はやっと自分の今の中国語のレベルに気づかされ、このままではダメだと強く思った。

その夜ツアーが終わり解散後、彼らは夜ご飯を食べに連れて行ってくれた。そこでは羊まるまる一匹焼いたものが出され、皆で羊を囲み手でちぎって食べた。あの味は今でも思い出すウイグルでの特別な味だ。

あの時私は外国で1人ツアーに参加し、周りは皆団体でわいわい楽しそうにしているのに対して、少し寂しさを感じていたのだ。しかしその寂しさは彼らの温もりにしっかりと包み込まれた。同時にその中で私は成長させられた。このことを機に私は少し強くなった気がした。

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