『火花』で感じた私と中国
 

私が中学生の時、又吉直樹さんの書いた『火花』について感想文を書いたことがある。作者自身の本職が芸人でありながら、作家としての才能も発揮し、芥川賞を受賞したことに日本中の誰もが驚き私も凄いなと感じた。そして、今年私は大学生になり大学で担当教授から中国について教わるうちに、中国の若者にも『火花』が人気で、上海で又吉さんが講演会を行ったことがあるということを教えて頂いた。NHKドキュメンタリーに収録された彼の講演会の映像資料を通じて、新たに様々な発見をすることが出来た。

まず、映像を見終えた私は中国の学生が又吉さんにぶつける質問内容が考え抜かれたものであったことに驚いた。世界第2位の経済大国として急成長した中国において、グローバル社会の激変に翻弄されている中国の若者達が、流暢な日本語で真剣に『火花』について質問し、より理解を深めようとする姿は私も見習いたい。

次に、私は日本と中国で抱える悩みは意外と同じかもしれないと感じた。地域によって経済格差が激しい中国で、就活に悩み、将来への不安を抱える学生が映像で紹介された時、私も将来の進路が定まらないという悩みを抱えているので共感できた。これからは国ありきではなく、むしろ地域や市民社会の経済や文化の発展を実現するために個々人の賢知が求められているのではないか。それ故、感じる孤独感や焦りを同じような境遇の『火花』の主人公と重ね合わせて読むことで、日中両国に爆発的なヒットを生み出したのかもしれない。

さらに、又吉さんが一人で書き上げた作品が中国の方に伝わり、文学を通じて日中の文化交流・人的交流までに発展できたことが素晴らしいと感じた。今まで一人では何も出来ないと考えていたが、個人の活動次第で自国や地域を十分にアピールできるということを学んだ。

従って、私も地元である広島から平和関連でアジアの国の方と繋がることのできる活動に参加したいと考えている。広島の平和公園では毎年沢山の外国人が訪れるが、今までは欧米諸国の方々が大半を占めていた。最近は中国と韓国といったアジアの国に住む方々の訪問が目立ち、より一層平和に関する関心度の高まりを感じている。日中韓三カ国は地理的な位置関係が近く、戦争という負の遺産を乗り越え友好関係を構築してきた。ただ、経済交流は急速に進展するものの相互の信頼醸成には結びついていない。だからこそ広島で中国や韓国の方を見かけると、国同士の壁を越えられたようで嬉しく感じる。また、私は広島で原爆の被爆者が高齢化していることから、直接お話を頂ける最後の世代と言われてきた。だからアジアの訪問客が増えている今、私も中国語や韓国語を勉強して直接話しかけることで平和をアピールしていきたいと思う。幸いにも広島では平和公園で行われる学生ボランティアなどがあるので、大学生のうちに参加していきたい。

そして、文学などを通じて社会に直面する中国の若者達の姿を見て、私も将来に向けての大学生活をどう過ごすのか真剣に考えるようになった。それまで私はまだ大学1年生だから4年間で自分のやりたいことや目標を見つけようと考えていた。しかし、それは「平和ボケ」した日本で学んだからこそ出る考えだと気づいた。

最後に、日本はこれから令和時代を迎え改めて平和とは何かを模索していくだろう。私も将来、中国などのアジアの国を対象に取引をする商社で働きたいという夢が出来たので平和な取引をする方法を模索していきたい。そのために、大学生の間に英中センターや語学研修を利用して中国語をマスターしたい。そして中国へ留学し、日本の平和に対する価値観を伝えながら中国の文化や芸術を学びグローバルな思考の出来る人になりたいと考えている。さらには、panda杯のように中国と日本の架け橋となるような活動にも積極的に関わりながら、自ら進んで学びを深められる人になっていきたい。

 

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