おじさんの結婚相手
 

「おじさんが若い中国人と結婚するらしい!!」七年前の我が家での大ニュースだった。

おじさんは祖母の弟で、私は数か月に一度そのおじさんに会いに行っていた。

彼の年齢は五十代。独身を貫き、自由気ままな生活をしていた。そのおじさんがついに結婚をする、それも中国人と!

当時の我が家での中国人へのイメージは良くなかった。家族皆おじさんの結婚に反対をした。結婚相手の年齢が二十代であったこと、おじさんはその人に一度しか会ったことがないこともあり家族はさらに反対をした。

だが家族は、そんなに年の離れた人と結婚はやめるべきだ。もっとお互いをわかりあってから結婚しなければ。とは言わなかった。ただ「中国人と結婚なんて、絶対に遺産目当てだ!危険だ。危ない。」と言っていた。当時の私も真剣にそう思っていた。祖父母も皆がそう思っていた。しかしおじさんは結婚式を挙げた。数か月してようやくその夫婦に会いに行く日が来た。おじさんは私たちに、その人のことを「ケイちゃん」と呼んでと言った。

どんなとんでもない女の人が出てくるかと身構えたが、ケイちゃんは笑顔が素敵で、片言の日本語が可愛らしい人で、とても遺産目当てでおじさんと結婚するような人だとは思えなかった。

帰宅し、家族会議が始まった。会ったこともない中国人のケイちゃんに対してあんなに怒っていたのに、実際に会った後私たちは皆良い意味で拍子抜けしてしまった。「聞いていた話と違う。ニュースで日本に対して怒り狂っている中国人の映像は何だ。」想像と現実の違いにただ驚いた。

そして我が家とケイちゃんの交流が増えていった。また、ケイちゃんはおじさんの母親つまり私の曾祖母の介護をしていた。数か月に一度しか会わない私でもわかるほど彼女は手厚い介護をしてくれていた。異国の地で、会ったばかりの人の介護。簡単なことではない。

あるとき、ケイちゃんが怒っているという話を聞いた。怒るのも当然だ、そう思った。だが彼女が怒っていたことは、私たちが曾祖母に頻繁に会いに来ないことで、年長者をもっと敬うべきだとのことだった。

その話の後に知ったことだが、中国の人々には年長者を敬う文化があるらしい。ケイちゃんが私たちの家族になっていなければわからなかったことだ。そして私たちは曾祖母に以前よりも会いに行くようになった。ケイちゃんのおかげで家族の距離が縮まった。

そして中国へのイメージや私の考え方は大きく変わった。ネットやニュースだけを見て判断してはならない、自分の目で見て実際に体験しなければ本当のことはわからない。そして勉強の必要性に気付いた。

今ではケイちゃんのことを好きな祖父だが以前は中国人なんて最低だ、が口癖だった。彼の中国嫌いは戦争が関わっていた。彼は子供時代に中国は敵だと言って育てられた。きっと中国に対して良いイメージを持っていない日本人の高齢者のほとんどはそのような環境で育ったのだろう。

中国人は過去に日本に対して酷いことをした。本当にそうなのだろうか。

日本の平和教育は基本的に戦争で被害にあったことを強調している。私たちは集会で、原爆を落とされたときの被害がどうであったか聞いても、日本人が他国を植民地にして現地の人々に何をしたかは授業で軽く聞く程度である。だから勉強が必要なのだ。

過去に何があったのか、教科書だけでは見えてこない歴史を知ることで真実がわかる。そして分かり合った上で初めて他国の人々と交流できる、すべてを分かったうえで受け入れ、受け入れてもらう。この精神が一番大事なのだ。

今私は大学で中国語と英語を勉強している。世界に出て、知らなかったことを知りたい、日本に良いイメージを持っていない人に少しでも日本を好きになってもらいたい、その一心だ。

最後に。中国からやってきて、偏見しかなかった私たちの心をつかみ、大事なことに気づかせてくれたケイちゃんを私は尊敬している

人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850