小さな架け橋と深い絆
 

僕が中国に初めて興味を抱いたのは、卓球を通じた体験だった。中学生のときに卓球部に入部した僕は自然と卓球の世界大会などを通じて、中国の圧倒的な強さを目の当たりにした。僕が見た国際大会の優勝者はほとんどが中国選手で、日本の選手はまるで歯が立たなかった。そうしたなかで、中国の指導者が日本に来て若手の有望選手を指導したり、日本の有名選手だった福原愛選手が中国に渡り、卓球リーグに参加して腕を磨いた話も聞いた。これらが、僕が身近に聞いたはじめての国際スポーツ交流だった。

 僕が高校に入学するのと同時に、父が中国・広州に仕事で単身赴任した。冬休みに家族で父を訪ねて広州に行った。僕は中国に行ったら、ぜひ地元の人たちと卓球をやってみたいと思っていた。昔見たテレビ番組で、街中に卓球台が置いてあり、老若男女が卓球を楽しんでいる姿を見たことがあったからだ。その輪の中に入ってみたいと思った。

父に頼んで卓球ができる場所を調べてもらうと、広州市の中心部に立派な卓球用の体育館があることがわかった。体育中心というスポーツ関係の施設がすべて集まっている広大な地域の中に、卓球の体育館はあった。驚いたのは卓球体育館の廻りの屋外に、卓球台が何十台も置いてあり、そこに、昔テレビで見たような風景が、さまざまな人が卓球を楽しむ姿があったことだ。

卓球体育館の中はとても整った設備の中で、熱気にあふれていた。大きな五星紅旗の元で、子どもから大人までとても高いレベルの練習をしていた。父の友人の中国人の方に頼み受付の方と調整していただき、その場で練習できることになった。その練習場で一番若いコーチが相手をしてくれることになった。その日はあっという間の4時間の練習を行ったのだが、結局広州に滞在した4日間の毎日をそこで過ごすことになった。コーチの方が本当に親身に、言葉もあまり通じない中で、身振り手振りで卓球を指導してくれた。また父の中国の友人は何度も来てくれ、通訳をしてくれたりカウントをとるなど、長い時間ずっと立ったまま側で助けてくれた。そして、周りの方々もなにかと手助けをしてくれた。中国の人は、仲良くなると本当に親切で、日本人以上の「おもてなし」精神の持ち主ではないか、と感じた。またこうした交流も個人レベルの国際スポーツ交流ではないか、と思った。

僕は中国に行くまで中国の人が少し怖かった。なぜなら大きな声で話すことや、日本人にいい印象を持っていないので、僕は嫌われて嫌がらせをされるかもしれないと勝手に悪い印象を持っていた。しかし、実際は中国の人々は本当に親切だった。この交流で僕自身も中国のファンになったし、私を教えてくれたコーチも、その周りの方々も、私を通じて日本人に好意を抱いていただいたのではないか、と思っている。

 僕の通っている高校は、国際教育に力を入れているので、海外への留学や海外からの留学生の受入も多く行っている。そのような環境なので、私の周りには留学生も結構いて、コミュニケーションを取る機会が多くある。今回のこの中国での経験から、その留学生とまずは話してみる、そして一緒に何かをする事から始め、色々な違いに気づき、興味を持ち、尊重し合うことが本当の意味で仲良くなる、というように感じた。僕にとって、国際教育で一番大事なことはなにかというと、それは国際理解であり、「お互いの文化を尊重し、よく聞き、よく話しあう」ということではないかと思うようになった。

 日本と中国の人々の交流が、僕が体験した小さなスポーツ交流や文化交流の積み重ねがとても大事ではないかと考えている。このような交流が個人の繋がりの架け橋となり、その小さな架け橋の積み重ねが、国と国の深い絆を持つ大きな架け橋になるのだと考える。これからの日本と中国の平和な架け橋のために、僕も国際理解に貢献できる人間に成長していきたい。

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