アフリカで身近に感じた隣人
 
  日本と中国は、地図上では近い。長崎から上海まで700㎞ほどしか離れていない。しかし、私は、中国をどことなく遠い国のようにとらえてきた。それは、日本で目にする、中国に対する否定的な意見などが影響しているのだろう。ところが、2015年以降、遠く離れたアフリカで調査をするようになったことで、中国に対する心境に変化が生じてきた。

 近年、アフリカ諸国に対する中国の存在感は強くなっている。私が調査をしているウガンダでは、随所で中国関連の「モノ」を目にした。中国からアフリカ大陸には、投資や資金援助というカネ、安価な中国製品というモノ、出稼ぎ労働者というヒトの大きく分けて三つが大量に流入している。世間ではこれを、中国によるアフリカに対する「ソフトな」帝国主義だと批判する声もある。私は、ウガンダで生活する中で、この意見とは異なる考えを抱くようになった。

 ウガンダに対して中国は、多額の資金援助や投資をしてきた。その結果、ウガンダの都市部では道路網が急速に整備され、多くのビルが立ち並ぶようになった。例えば、昨今のウガンダは、舗装道路の普及率の低さや交通渋滞の慢性化が問題となっていた。このような状況の中、中国系企業によって空港から首都をつなぐ直通の高速道路が建設された。首都から空港まで移動するためには、2年前までは2~3時間かかっていた。しかし、新設された高速道路のおかげで、この区間の移動が1時間以内にまで短縮され、移動が非常に快適になった。

 また、中国製の製品は、今まで先進国から輸入されてきたモノよりも安価で、アフリカの消費者の手にも届きやすくなった。このおかげで、私を含めてアフリカで生活する人々の消費生活は豊かになった。ウガンダの私の友人も、みな中国製の服を着、中国製の携帯電話を使用している。私自身も滞在先では中国製の家電やマットレスを使用し、快適な調査生活をおくっている

 中国の出稼ぎ労働者は、現在ウガンダ各地でビジネスを興している。そのビジネス形態は、卸売りや中華料理レストラン、小売りまで多岐にわたる。私が調査をしている地方都市でも、2年前から中国の人が経営するスーパーができた。それまで首都で調達していたものが地方で手に入るようになるなど、生活が非常に便利になった。また、毎日のローカルフードに耐えられなくなったときには、首都の中華料理レストランにゆき、日本に近い味を思い出して、心をリフレッシュさせていた。

 最後に、より身近なレベルでの体験である。ウガンダで調査していると、道端でよく「チャイニーズ」と声をかけられる。ウガンダには中国からの出稼ぎ労働者が多く、また、彼らはカンフー映画が大好きなので、通りがかった私を見て、中国の人だと思って声をかける。実際、彼らは、中国、韓国、日本の人の顔を見分けられない。「なぜそんなに君たちは顔が似ているんだ」と、疑問を投げかけられることもしばしばである。そのような折には、「中国と日本は、ウガンダとケニアのように、neighbor(隣人)だからだよ。」と、説明すると理解しくれることが多い。このような説明を何度もしていると、地図上でなんとなく一番近い国だと認識していた中国に対して、中国が日本の本当にご近所のような感覚になり、親しみがどんどんわいてくる。

 普段、日本で生活していると、中国は遠くの存在のように感じてしまう。それが、日本を一歩出ると、中国と日本は人の顔が似ており、東アジアという同じ地域に位置し、文化圏も似ているということを自覚する。まさに「neighbor」なのである。中国のアフリカ進出に対しては、確かに批判される点もあるだろう。しかし、困難は伴うだろうが、「neighbor」として、中国と共に、よりよい世界をつくりあげられる方策を考えることは、将来の発展や貧困削減において重要になってくるのではないかと思う。
人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850