中国語学習のきっかけ

城本猛

 「青蔵鉄道に乗ってみたい!」

単純な動機で行くことを決めた中国。中国語をほとんど勉強せず行ったために色々なトラブルを味わった。

 「北京での飛行機の乗継以外は各滞在地でガイドを派遣します。」

それなら安心だねと、私と職場の同僚2人で北京に降り立った。後悔した。付け焼刃で勉強した中国語が全く通じないのだ。乗継カウンターでも、わけが分からぬまま、とりあえず西寧行きの飛行機に荷物を預け入れた。このとき同僚の一人が荷物の中に充電池を入れてしまっていた。恐らく空港でもアナウンスなどされていたのだろう。しかし、乗継の時間を有効活用したかった私たちは、天安門広場を見に行こうと空港から離れてしまっていたのだ。

 私たちは何も知らぬまま、天安門広場で中国らしい風景を写真に収め、西寧に到着した。私と一人の同僚はピックアップを済ませたが、もう一人の荷物が全く流れてこない。ガイドにお願いし、荷物の状況を調べてもらった。

「充電池が預け入れ荷物では運べない為、まだ北京です。充電池を処分すれば次の目的地、拉薩の空港まで空輸できます。」

充電池は高かったが背に腹は代えられない。処分することにした。しかし、私が驚いたのは、拉薩までは鉄道で行くのに、送料も取らずに届けてくれることだった。厳格ながらも融通が利くところは調整してくれる、そんな中国の面白さを感じた。

 とりあえず一段落し、ホテルに到着した。ガイドとはここで一旦別れ、私たちだけで夕食を摂ることにした。火鍋の食べ放題の店があったので入ったが、システムが分からない。質問をしても、相変わらず全く通じない。周りの客に身振り手振り教えてもらい、店員も粘り強く対応してくれたおかげで、30分かかりようやく食事を開始することが出来た。味は格別だった。中国は人対人の関わりになると、本当に優しい人が多いのだなと感じた。次に来る時までには中国語を使えるようになろうと決心した瞬間である。西寧の皆様、本当に迷惑をおかけしました。

 青蔵鉄道の車窓は、日本では絶対に見ることの出来ない景色が続き、あらゆるものが新鮮だった。相乗りとなった学生も優しく、何かあると声を掛けてくれたり、お菓子を交換しあったり。ほとんど身振り手振りでしかコミュニケーションが取れなかったのが本当に残念である。英語なら聞きかじった単語を並べれば最低限コミュニケーションが取れたので、中国語も同じ要領で大丈夫だろうと楽観していたのがいけなかった。ああ、もどかしい。もっといろいろと語り合って、仲良くなりたいのに!

チベットを観光し、最後の宿泊地、成都に到着した。我々と同年代の女性ガイドが出迎えてくれた。彼女は日本語を勉強していて、語学力向上のためにもガイドの仕事をしているのだそう。

ガイド「お前たちは成都で見たいところはありますか?」

私、笑いながら「『お前たち』は、日本だと失礼な言葉遣いになっちゃうよ。」

ご愛敬である。こうした指摘が出来るのも、彼女が日本語を勉強しているからである。中国に行くのに、ガイドに頼りきりでロクに勉強していなかった自分を恥じた。ちょっとでも話せるようになっていれば、現地の人に一番いい中国語指導をしてもらえたのだろうなと後悔した。

日本に帰り、早速中国語の勉強を始めることにした。最初の目標はHSK3級。通勤時間はリスニング、書き取りは家で。3か月ほどで受験し、結果は合格。嬉しかった。次は4級だ。使う単語が倍近くなるので非常に苦労したが、これに受かったらまた中国に行くぞ!と鼓舞し勉強を続けた。そして、今月受験し、出来はまずまず。結果発表が待ち遠しい。受かったら冬のボーナスで中国に行く!今度こそちゃんとコミュニケーションをとって、充実した旅行にしたい。ゆくゆくは日本に来た中国人を案内できるくらいまで成長し、恩返しを果たしたい。

旅行のトラブルと、中国人への感謝が私の中国語学習の原動力なのだ。

人民中国インターネット版

 

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