漫画から見る日本人の中国人像

野田美輝星

 私と中国との最初の出会いはアニメの中であった。幼いころ大好きだったアニメ「らんま21」に出てくる「シャンプー」という中国人の女の子はとてもかわいく、私のお気に入りのキャラクターのひとりだった。シャンプーに限らず日本の漫画やアニメには昔も今も多くの中国人キャラクターが登場する。しかしそのキャラクター像は時代を経るごとに着実に変化していることがわかる。そこで日本の漫画キャラクターから見る中国人に対する印象の変化について考えてみたい。 

 日本の漫画に出てくる最も初期の中国人キャラクターは1964年連載の「サイボーグ009」に出てくる「張々湖」や1979年連載の「キン肉マン」に出てくる「ラーメンマン」だろう。これらのキャラに共通する特徴は、ハの字のひげ、辮髪、おかしな日本語を使っているという点だ。どちらかというと敵や暴力的な人物として描かれていることが多いことがわかる。これらの特徴は日清戦争や第二次世界大戦における中国との戦いにおいて生まれた偏見や悪いイメージがもとになっているだろうことが予想できる。それではこれらの中国人に対する悪いイメージはいつ頃、なぜ、現在のようなかわいい中国人像に変化したのだろうか。ある教授によると、1986年に公開された台湾映画「キョンシーズ」という映画が一つのきっかけになったという。台湾人の女優によって演じられたテンテンというかわいらしく、斬新なキャラクターは日本でも大人気になった。また、先に紹介した「らんま21」もこの映画公開の次の年1987年に連載を開始していることから、この漫画も可愛らしい中国人の女の子キャラクターを広く普及させた要因といえるだろう。

 次に考えたいのは中国人キャラクターがよく使う「~ある、~あるよ」という特徴的な口調についてである。少しでも中国語を学んだことのある人ならわかると思うが、現実の中国語にはこのような語尾は存在しない。つまりこの口調は日本人が作り出したものだということがわかる。起源に関しては諸説あるが、昔日本人向けの中国語学習用教科書において「没有」を「ないある」と訳したことがきっかけという説や、満州植民地時代に簡易日本語として中国人が語尾に「~ない(否定)」「~ある(肯定)」をつけて話していたことに由来するなど明確な答えはないように思える。また、1931年から連載されていた漫画「のらくろ」の中でも中国兵にこの「~ある」口調をしゃべらせている。これらのことを考えると現在とは異なり、差別的な要素を含んだ表現であったことがわかる。

このように現在は一種の中国人キャラクターのアイデンティティーとして好意的に用いられている多くの特徴が、以前はまったく異なる印象を持っていたことがわかる。最近の漫画では商人として登場するキャラクターも多くいることから、近年の中国の経済的発展から商売上手なイメージが新たに作り出されているということもわかる。日本文化の代表として広く認知されているマンガやアニメは上記のように検証材料として価値があることが今回よくわかった。これからも注意深く観察し、日本人の中国人像について調べていきたい。

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