シャレから始まる私と中国

宮地大輝

小学生の頃、クラスでダジャレが流行った時期がある。私のクラスでは、日常的にふとんがふっとんだのはもちろん、全校集会での校長先生はゼッコーチョーであった。そんなダジャレセンスの高い(?)私のクラスのとっておきのダジャレの一つには「チャイナにいっちゃいな」、なんてのもあった。クラスメイトの一人が、親の転勤の影響で北京に引っ越すなんて奇跡的なことがあった日には、みんなここぞとばかりにチャイナにいっちゃいな、と面白おかしく彼を送り出した。面白くてクラスの人気者だった彼が最後の挨拶で「中国はちゅっごく広い」なんて言うものだから、クラスは大盛り上がり。とてもとても楽しかったそんな日々は、私が初めて中国、という国を知った瞬間だった。(同時にチャイナという英単語も覚えた。)当時の私にとって、中国は「チャイナにいっちゃいな」、というくらいだから、日本からどこか遠い国、というイメージに過ぎなかった。

時は流れ、社会人。私はペンキや接着剤、プラスチックの原料を取り扱う貿易会社に入社をし、中国との取引を行う部署に配属された。世界を舞台にビジネスを展開できることに魅力を感じ、入社を決めたが、元々中国とのやり取りを希望していたわけでもなく、入社後は、ただなんとなく配属された部署で与えられた仕事を淡々とこなしていた。仕事にやりがいを見出せず、面白みのない毎日を過ごしていた私が、中国に初めて足を運ぶことになったきっかけは意外にも、あの、小学生の頃のクラスメイトだった。同窓会で再開した彼は、北京に数年住んだ後、上海へ移動。上海の大学を卒業し、日本で就職をしていた。お酒を飲みながら彼の長い中国生活の話に聞き入る。小学生時代の懐かしさに彼のユーモラスな性格も相まって、中国の話を聞くのはとても楽しかった。楽しそうに聞き入る私が「上海に友人がいるから、行ってみたらどうか」と提案されるまで、そう時間はかからなかった。リアル「チャイナにいっちゃいな」だと思いながらも、お酒の酔いと再会の喜びの勢いで、訪中を決めた。

初めて行った上海では、高層ビルや夜景、地下鉄トンネル内の広告、スマートフォン決済、発展している街に衝撃を受けた。これが中国か。自分が取引を行っている国はこんなにも発展している国なのか。私が携わった商品はこの町のどこかに使われているのか。そう思うと何となく嬉しくなった。親切なクラスメイトの友人の上海人のおかげもあり、初めての中国旅行は楽しいものとなった。

それから約1か月後、出張でも訪中の機会が与えられた。化学品の取引を行う私は、中国の山奥の工場訪問をすることになった。上海ですっかり中国に対するイメージが定着していた私は、二度目の訪中を楽しみにしていた。しかし、そこで目にする光景は上海のそれとはうってかわったものであった。工場までは鉄道と車を乗り継ぎ、大連から半日かけて行くのだが、その途中の未舗装の道、不衛生なトイレ、道端に座る泥まみれの子供たち。中国には、貧しくて、衛生的な環境やインフラが整っていない地域がまだまだあることを思い知らされた。私は中国のことを全然知らない、そう思わされた瞬間だった。発展した部分だけを見て、中国は発展している国だ、と思い込んでいた。格差社会の現実を目の当たりにし、愕然とした。同時にもっとこの国の貧しい人たちの助けになりたい、という思いが生まれた。幸い、仕事上のパイプはある。自分が仕事を頑張れば頑張るほど、間接的にでも、微力ながら中国の人たちに貢献できる、そう思うようになった。それからというもの、中国との取引を毎日行う私はやりがいを持って仕事に臨むようになった。1年前から始めた中国語の学習もとても楽しい。

 日々の大半を占める仕事にやりがいを見出せたのは、中国のおかげだ。「チャイナにいっちゃいな」と言われたら今では間違いなくこう言う。「喜んで!」

 

 

人民中国インターネット版

 

人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850