映画で語る中国愛

荒井智晴


この数年来、私は中国と映画交流を通して繋がっている。中国はものすごい勢いで映画大国化している。今後も影像交流を担っていく一人として、どのように協力し、付き合っていくか模索してみたい。

中国人は影像大作を好む傾向にある。私の中国の友人達も、せっかくお金を払って観るのなら、生活の延長線上のこじんまりしたドラマ重視の作品ではなく、規模が大きく派手な作品に心が動かされるようだ。

中国は今でも日本のアニメ技術や脚本の練り、クリエイターの熱意に尊敬の念を抱いてくれている。仕事を真面目にこなす勤勉さのイメージ、日本人の特徴は崩れていない。

映画には人の心を動かす力があると信じている。映画は文化の窓でもある。描き方一つで、その国の長所短所を理解でき、その国を学ぶ助けになる。私は近い将来、中国が映画の中心に位置していると考えている。市場が可能性を秘めているので、日本でも進出や合作が増えていき、競争になっていくだろう。

私は、中国の大作以外にも、まだ商業デビューする前の新人監督と合作し、プロデュースを行っている。若手支援のような形で協力しているのだが、彼等の熱意や技術力は総じて高い。そして深く外国の趣味・志向を研究している。頭角を現すために、キャストに何割の外国人を組み込むべきか、その国の市場を狙って、スタッフにも留学生の協力を仰ぎ、意見を取り入れる。リアリティを高める柔軟さがある。市場のニーズ研究と合作が戦略的で余念が無い。国家も文化の推進力となるべく時代を担う若手に対して、強力に後押ししている。

邦画の、特に新人若手監督は資金集めに苦労している。アイデアは素晴らしいが、資金がないばかりに実現できない。中国と違い自助努力になる事が多く、先ず支援制度も少なく、あっても小額である。私は日中合作という道で、この資金力の無さを解消していきたい。中国と協力していくことは、互に切磋琢磨し両国の技術の底上げになる。私自身中国に留学以降、多くの中国の友人との付き合いを大切にして、常に趣味嗜向を日々研究している。

中国との合作は大変なものである。日本と中国の仕事の進め方も違うが、意見をすり合わせていき、打開点を見つけることに意義があり、醍醐味と感じている。違う文化と文化が合わさると、また新しい文化が生まれるのだ。

この先、世界をリードしていく中国の発展が楽しみである。日本人として自国への寄与も兼ね、手を携えていくスタイルを貫いていきたい。

私は現在、自身がプロデュースした日中合作品を、日本の映画祭で紹介したり、地方の大学や公民館で上映してもらったりしながら、少しでも中国と縁のある作品に触れる機会を増やしてもらう活動を行っている。小さな草の根活動ではあるが、物珍しさもあるのか喜ばしいことに好評価を頂いている。母校から中国語の授業でも使用したいとお声がかかり、文化を学ぶ以外に聴力を鍛えるのに良いと評判になり次々に起用してもらえた。映画祭関連では提携している海外の姉妹都市からも要請があり、韓国のプチョンやドイツのハンブルクでも上映して頂いた。読めないのが悲しいが向こうの言語で感想を受け取るのは誇らしかった。

新型コロナウイルス感染症で制作活動が滞っている昨今、一日も早く自分自身が監督、脚本、すべて手掛けた日本と中国の共通の題材を取り上げ映像化したい想いがある。目下、映画祭巡業で訪れた福井県あわら市で学んだ「魯迅と藤野先生」の日中友好物語に感銘を受け、実写化実現に向け取り組んでいる。日本各地の映画祭において、日本の観客は中国作品に対して好意的だった。歴史的背景から日本と中国の絆は深い。映画上映を介して、交流会で観客の方から、中国とのエピソードやその土地の逸話を伺えることも多い。こういう経験が嬉しいのだ。

私は、両国国民の相互理解と幅広い層での交流が一層深まる事を願って、今後も貢献していきたい。

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