アイドルと先入観と私

加藤凪咲


アイドルに熱狂的にはまった経験はありますか。私はありませんでした、この6月まで。初めてその沼にはまったアイドルは「中国アイドル」でした。

私が沼にはまったきっかけは、中国語の歌が歌えたなら、中国語の習得がはやくなるのではないかという好奇心と中国人美女への憧れでした。ネットで「中国 アイドル 女性」と画像検索していましたが、中国人美女ではなく、とある美少年に目が留まり、男性アイドルでもいいかなとおもい、その方をたどっていきました。中国語の打ち込みができないので、日本語で似たような漢字を打ち込んだり、画像のロゴを解読したりという苦労の末、やっと一つのアイドルグループにたどり着きました。それが「THE9」です。

THE9」は「青春有你2」というオーディション番組で勝ち残った9人組の女性アイドルグループです。女性でした。私が「美少年」だと思った方は「美少女」だったという衝撃は今でも忘れられません。9人は個性が強く、今までのアイドル像とはかけ離れているといえます。衣装もそろってはいるけれど、スカートとパンツ、長袖と半袖や、へそ出しとそうでない人、など所どころで異なり、各々の強みを生かした衣装になっています。

私と「THE9」との出会いは一目ぼれのようなものでしたが、調べていくうちにその内面性にも惹かれていきました。それと同時に私が「中国人」に対して先入観を持っていることに気が付かされました。私はそれまで、中国人は自分勝手で、他人を蹴落としてものし上がる精神をもっていると思っていました。しかし、「青春有你2」の番組は、ライバル同士であるにもかかわらず、研究生たちが互いに教え合い、応援し合い、助け合っている場面であふれていました。失敗してへこんでいることを気づかせないようにしている姿やそれでも気づいて声をかけに行く姿に感動しました。

テレビのニュースでは中国人の悪い面ばかり頻繁に取り上げられています。転売・買い占め・密漁などです。日本人にとってなんとなく中国人は怖い、自己中心的という先入観が形成されているのです。こうした事件は事実ですが、「中国人」としてひとくくりに怖い、自己中心的な人とみるのでなく、一人一人「人間」としてむきあう必要があると学びました。

これは中国人に限った話ではなく、私たちは多くの場面で先入観をもって人を判断してしまいがちです。日本国内ならば、大阪出身者はさわがしい、ピアスが多ければ遊び人、女性だから仕事ができない、男性だからかわいいものは似合わない、など挙げればきりがないです。

私は先入観をなくすことは不可能ですが、先入観の押し付けは防げると思います。その押し付けこそが差別となり、社会問題へと発展していくのだろうと思います。

少年のようなかっこよさをもつ美少女がセンターである「THE9」。個性ある9人がさらに活動の輪を広げ、多くの人が自分のなかの先入観に気付いていければいいなと思います。

THE9」関連の動画にはほとんど日本語字幕がないので、翻訳が大変ですが、いつか彼女たちの歌や会話が本当の意味で理解できるように、中国語の勉強に励みたいと思います。

人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850