本質を知るために

松岡実優


中国人は日本人に比べて親切じゃない。日本人はこのような考え方をしている人は、そう少なくないように感じる。実際、私自身も中国人の方に嫌がらせを受けたり、不快に感じるようなことを意図的にされたことがないにもかかわらず、子供のころから中国人の方に対してこのようなイメージを持ってしまっていたかもしれない。しかしある5分に満たない、たった1本の動画を見て私の持っていたそのイメージが大きく覆された。

その動画は、中国で「靴擦れで、はだしで街を歩いている女の子がいたら、どんな反応をするのか」の検証を行うといった内容のものだった。動画では、靴擦れによって痛そうに、足を引きずりながらはだしで歩いている若い女の子の俳優さんのほかに、俳優さんと同年代の散歩中の女の子や、ショッピングに出かけるお姉さん、きさくなおばさんやおじいちゃんなど様々な人が出演していた。私はこの動画を見る前はきっと見て見ぬふりをする人や、助けの手を差し伸べない人が多くいるだろうと思い込んでいた。しかし、実際にこの動画を見てみると、やさしくて心温まるような世界が広がっていた。持っていたティッシュで血を拭くようにと差し出してくれる人、わざわざ少し遠くのコンビニまで走って向かい、けがした箇所に貼るようにと絆創膏を買いに行ってくれる人、タクシーを呼ぼうとしてくれる人、自分の履いている靴下を履くようにと貸してくれようとする人、目的地までおんぶしてくれる人やバイクの後ろに乗せて送ってくれる人など、それぞれの人がそれぞれの方法で女の子に救いの手を差し伸べていた。また、その検証が終わり、撮影していたことを伝えると皆が口をそろえて「大丈夫、大丈夫!」と屈託のない笑顔でネットのサイトにアップロードすることを快く了承していた。そこから、私の以前からのイメージにあったような親切でない人は一切おらず、むしろ中国には心優しく、親切心であふれたような人がたくさんいるということがひしひしと伝わってきた。また動画の最後には「Warmth is reflected in actions, small but indispensable.」訳すと「温もりは小さなしぐさに秘めている、小さいけど不可欠だ。」というような言葉が書かれていた。この動画内に登場した中国人の方は、この言葉のように毎日の生活の中で決して欠けてはならないぬくもりや温かさが一つ一つの仕草や行動、言動からとても感じられていた。

私はこのことを通して、国と国同士のことに限らず、人と人同士であっても思い込みや見かけで人を判断してしまうのではなく、その人の実際の行動を見て、性格や内面を理解しようと努めなければ、その人の本質を分かることはできないのだと学んだ。これは、住んでいる国が違っていても、同じであっても言えることだ。私はこれからの生活で、今まで無意識のうちに持ってしまっていたような偏見や一方的な見解をなくせるように、人や物事を多角的な視点で、深いところまで知ろうとする努力を欠かさずにやろうと心に決めた。

 

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