中国文化の“かわいい”再解釈

薗部夏未


近年、日本のコスメやファッションは中国で広く人気を博し、中国のニュースサイトでは日本の女性タレントが中国名のあだ名までつけられて記事になっています。中国旅行に行っても、成都のドラッグストアには日本製のスキンケア商品が日本の倍以上の値段で売られ、上海の地下鉄の駅には日本の女子高生風な服やロリータファッションに身を包んだ女の子が歩いています。深圳からの交換留学生の友達に「あの女子高生風な服を着てる子は本当に高校生なの?」と聞いてみると、ほとんどが大人なのだそうです。制服というものの意味が海を渡って薄れ、“日本のかわいいファッション”として再解釈されているようです。

なんと、この現象は2020年の日本においても起き始めています。SNSを開けばみんな口をそろえて「今年流行るのはチャイボーグメイク!」と言ってチャイボーグ(チャイナ風でサイボーグのように人間離れして美しい)メイクのやり方や中国のコスメブランドを紹介しているのです。とはいえ、ここでいうチャイナ風というのは現代の一般的な中国人のメイクではなく、時代劇に出てくる宮廷の女性のようなメイクなのです。実際、中国語のサイトでは「日本では中国メイクが流行っているらしいけど中国人のメイクとは違うよね」とか、「なんだか劇風だよね」などといったコメントがついています。中国人インフルエンサーが撮影用にそのようなメイクをしているのをインターネット上でたまに見ますが、実際街を歩くと薄化粧の女性が大半だと感じるので、「これが中国メイク?」と思われるのも当然だと思います。でも、海を渡れば「中国女性といえば時代劇に出てるハリウッド女優!きりっとしたアイメイクに赤リップが素敵!」と思う人が多く、時代劇はあくまで時代劇なのに、その意味が薄れ、“中国のかわいいメイク法”として再解釈されているのです。

そしてその“かわいい”再解釈、実は私の中国愛の一端も担っています。というのも、私もやっぱり憧れの国である中国の美容法を試してみたいと思って、「中国美人=楊貴妃!」と考えた結果、中国薬膳や中医学の勉強を始めたからです。本来、中医学は美容を主たる目的としていないものですが、中国も美容も大好きな私の手にかかれば中医学も“かわいい”の手段です。中医学は日本に輸入されて漢方として発達してきたので、日本人にとってもなじみのあるものですが、「本場中国の中医学」と言われると、なんだかより美容と健康に良さそうに思われて、楊貴妃みたいに美しくなれるかしら、なんて妄想も膨らみ、中国への憧れと愛は深まるばかりです。きっと現地の女の子たちは使っていないであろう上海で買った伝統的な保湿クリームも大事に大事に使っています。

このように、若い人たちの間でお互いに相手の国を憧れの存在として捉えることが流行っているというのは、日中友好にとって大きな意味があるのではないでしょうか。たとえ入り口がメイク法やファッションであったとしても、憧れの国に近づくために言葉を勉強したり、留学生に話しかけてみたりするうちに、より深く相手の国を知り、たとえ政治的、歴史的な問題を抱えている国同士であっても、個人のレベルでは互いに尊敬しあい、友好関係を築くことができると思っています。これからも若い人たちが互いの国を「クールでかわいくて素敵な憧れの国」として尊敬しあえる日中関係でありますように。

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