ちりも積もれば日中友好

川﨑裕紀


 

「千里の道も一歩から!ちりも積もればやまとなでしこ?」恋愛サーキュレーションという名のこの曲は、日本だけでなく中国でも大流行で、中国の友達とカラオケに行けば必ず歌う名曲だ。単に流行っているだけでない。外国語の曲を聴くと歌詞が気になってしまうのは万国共通だ。中国の友達から歌詞の意味を聞かれて、私は少し困ってしまった。「やまとなでしこどんな人?」「なんでちりが積もるとやまとなでしこになるの?」「ふわふわとくらくらって何が違うの?」歌詞といっても、そこに込められている意味は奥深く、「やまとなでしこ」を説明するだけでも、日本文化や社会、慣習など様々な要素が絡んでくる。また、この歌には、「千里之行,始于足下(千里の道も一歩から)」「少成多(ちりも積もれば山となる)」など中国の成語と重なる歌詞が含まれている点も興味深い。

実は私と中国人の友達はこの歌をきっかけに言語や文化について真面目に勉強するようになった。アニメが好きだった私の友達は、もともと日本語が流暢で割と難しい言葉も知っていたので、自分は彼以上に勉強して説明できないと恥ずかしいと感じるようになっていった。特にオノマトペなんかは説明するのが難しい。よく広告や商品パッケージでも出てくる「ふわふわ」「もふもふ」「もちもち」の違いなんて今でもスマートに説明できない。中国語だと「唉」「欸」「の違いは今でも正確に説明できない。でも、感覚的に捉えていたことを再考することは、今まで自分が常識だと考えていたことが誰かにとっては常識ではないんだと気づかされる。この感覚は異文化理解に重要なことである。日本で生まれ育った私にとって当然の価値観であることは、中国では新鮮で理解しがたいこともある。当然ながら、その逆も然りである。確かに自分は「ふわふわはふわふわで、もちもちはもちもちだ!」と疑念をもたずに思っていたけど、客観的に考えると「ふわふわ」はより柔らかくて泡状な感じで、「もちもち」はより粘り気が多いのかな、と考える。そうしたら自分も理解でき、相手にも伝わりやすいやすいし、話も弾んでお互いに楽しい。

流行りの歌や身近な話題を出発点として交流することが、お互いの国について理解を深める入り口になる。これこそ「千里の道も一歩から」であり、私たち一人一人が日中交流の懸け橋となるのである。そのきっかけは流行の歌でも好みのアイドルでもいい。例えばショッピングの話から始まったとしたら、「日本ではバブル時代があって、その頃はみんな旅行に行って高級ブランドが大人気だったよ」と経済の話を、「今はあまり高いモノを買わないけど、コスパには気を遣っているよ」と社会の話、「中国では小康社会と呼ばれるみんながある程度豊かで幸せな社会を目指すという政府のスローガンがあるよね、それって今の日本社会なのかな」という政治の話につながる。お互いに話しやすいトレンドの話題を出発点とすることで、より深い交流になる。一つの話から、社会情勢、政治、経済、法律など様々な方向に話が広がり、知らなかった相手国のことを相互に学ぶことができる。そして、相手が自分の文化の中で常識だと考えている事が、違う考えもあるということをお互いに気づき、理解し合うことで相手に対する信頼や尊重の心が生まれる。信頼や尊重の関係が築けたら、自分のプライベートの恥ずかしい失敗から日中関係といったトピックまで初対面では気を遣うような話でも何でも話せる友情ができる。日本では、相手を想いやり喜ばれるように心配りをする「おもてなし」、中国では民心の通じ合い「民心相通」という言葉があるように、日中両国は相手を尊重し、人と人との信頼関係を大切な価値観にしていると思う。私たち一人一人はちりのように小さいかもしれない、それでも私たちの国境を超えた信頼で大きな日中友好を共に作り上げたい。

 

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