最年少の友達との出会い

川崎瑞歩

“姐姐,好想你呀”(「おねえちゃん、会いたいよ」)。先日、メッセージアプリのWeChatに突然届いたボイスメッセージを聞き、今すぐにでも飛行機に乗り、彼女に会いに行きたいという衝動に駆られた。

留学中の201912月、北京にある新疆料理のレストランで私は彼女に出会った。18歳も年が離れている私の最年少の友達である彼女は山西省から家族と旅行に来ていた。私は韓国人の友人と初めて食べる新疆料理に舌鼓を打ちながら、前のテーブルで食事をしている彼女のことが気になって仕方なかった。というのも、彼女が椅子の上を立ったり座ったりバタバタしながら、私に気づかれないようにチラチラとこちら側のテーブルの様子を覗いていたからだ。そこで、私から声をかけようと思った。しかし中国人の小さな子どもと交流したことがなかった私は、何と声をかけたらいいのだろう、もし彼女の中国語を聞き取ることができなかったら不安な気持ちを与えてしまうかもしれないなどと考えてしまい、普段であれば初対面の中国人にも積極的に話しかける自分とはまるで別人のように緊張していた。何度も声をかけるタイミングを見計らい、やっと「你好」(こんにちは)の一言を発することができた。

そこから、日本人の私と韓国人の友人そして中国人の女の子の3人が仲良くなるまでは時間がかからなかった。私と友人は思わずそれぞれ日本語と韓国語で「かわいい」と声に出してしまうほど、天真爛漫で好奇心旺盛な彼女と気づけば1時間以上も一緒に夢中になって遊んでいた。彼女のお母さんは私たちが留学生であることに驚き、彼女に私たちが日本人と韓国人であることを教えていたが、2歳の彼女は「外国人」という言葉の意味を理解していないようだった。理解できていないからこそ、私は嬉しかった。もし彼女の年齢が少し大きく幼稚園や小学校に通っていた場合、恥ずかしさや緊張などの理由で外国人の私たちとここまで仲良く遊ぶことはなかったかもしれないからだ。そしてこの時、偶然に出会った私たちが国籍や年齢の壁を感じることなく楽しい時間を共有することができたのだと改めて実感した。別れ際、一緒に撮った写真や動画を共有するために彼女のお母さんと連絡先を交換し、次にいつ会えるかも分からなかったが「再(またね)とあいさつをした。

この出来事から1か月も経たないうちに、新型コロナウイルスの感染症流行の影響により帰国せざるを得なくなった。幸いにもオンライン上で留学を継続することはできたが、再び中国に戻ることなく留学期間が終わってしまった。中国での生活を思い出す度懐かしく、そして恋しくてたまらない。豊富な料理がずらりと並ぶ学生食堂、空席を探すのに一苦労する図書館、頻繁に通ったジューススタンド、公園で楽しそうに踊る阿姨、駅での安全検査など何気ない日常の風景はまるで幻だったかのように感じることがしばしばあり、心にぽっかり大きな穴が開いてしまった。しかし、中国に渡航できないこの状況の中で何ができるかを考え、オンライン上で留学生の授業支援のボランティア活動を始めるなど気持ちを切り替え始めた時期に冒頭のボイスメッセージが送られてきた。まさか当時2歳だった彼女が私のことを覚えていてくれたことに感動し、喜びのあまり涙がこぼれた。メッセージは彼女のお母さんの携帯から届いているため、実際のところ、彼女が自発的に連絡をくれたのかどうか、そして私のことをどのくらい覚えているのかは分からない。しかし、おそらく彼女にとって初めての外国人との交流である私たちとの出会いが少しでも思い出として残っているのならとてもうれしい。今後、彼女が成長する中で様々なことに興味や関心を持つだろう。その中のひとつに日本や日本語といったものがあればいいなとひそかに思う。

 

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