良農不為水旱不耕

山本可成

観光立国を目指す日本は伝統文化を活用して、観光客の誘致に力を入れている。功を奏してか、近年3000万人を超える外国人観光客が日本を訪れている。それに伴い、私が住む街である京都は、日本観光の中心地となっている。事実、米国の調査によると、2020年において、京都が世界で最も魅力的な大都市ランキングで首位に立った。多くの外国人、まして日本人も京都が古き良き日本を体現した日本文化の中心と考えている。

では、この京都の文化がどのように形成されたのか。文化が文化たるものとして根付くには様々な要素が組み合わさり、現在へと紡がれる必要がある。文化の営みは、何の過程なしに出現することはない。「歴史とは現在と過去との絶え間ない対話である」と歴史学者のE.H.カーが唱えたように、過去を振り返り、原点を思い出さなければ、自身のアイデンティティを確立できない。だからこそ、私は「京都」と対話してみることにした。手始めに、京都検定を取得し、町内の祭である祇園祭に参加した。

対話することで見えてくるものがある。それは、京都の街並みは、唐時代の中国文化の影響が非常に大きいということである。もちろん日本独自の進化は遂げてはいるが、当時最先端都市であった長安城を手本に碁盤の目状に整備された都市、木造瓦葺の町家、鍾馗さんの置物など、唐の香りを感じられる。父の仕事柄、私も中国の方と多く接する機会が多くあるが、そこで興味深い話を聞かせてもらった。

「京都は、私たち中国人にとってある種の故郷みたいなものだよ。失われた唐の文化を色濃く受け継いでいるからね。京都に来るとタイムスリップしているみたいで楽しいよ。」

少子高齢化や都市開発が進む中で、日本人自らの手によって、いくつもの京町家が解体され、ビルが建設される景色を見てきた。その中で、今となっては不思議なことではないが、京町家を買取り、丁寧に補修し、再び魂を吹き込んでいるのは中国の方なのである。この場を借りて感謝したい。

日本三大祭の一つで、山鉾巡行で知られる祇園祭においても、中国無しに語ることができない。郭巨山、函谷鉾、鯉山、蟷螂山、鶏鉾、伯牙山、白楽天山、孟宗山の7つの山鉾が中国の故事を由来としている。私が参加している蟷螂山は、梁時代の昭明太子詩文集『文選』のなかの「蟷螂の斧を以て隆車の隧を禦がんと欲す」という故事に由来している。中国四千年の歴史、中世中国の精神の一部を私たち京都人が現在にまで受け継いでいると考えると、何とも不思議で、感慨深い。

このように歴史を振り返ることが重要である一方で、未来を志向しなければ、日本の明日はない。幼少より史記を読んで中国に興味があったことと、中国の急激な発展に関心があり、大学では第二外国語に中国語、専攻として政治学を選択し、中国の政治・経済・社会を学んでいる。その中で、中国の最先端技術である都市大脳の活用、雄安新区をはじめとするスマートシティの建設を知って、心が躍った。世界の最先端技術を実行に移している中国を、日本も見習うべきだと思った。だからこそ、私は中国語力、大学の成績を高めて、清華大学への派遣留学生に選出された。まさに遣唐使である。しかし、COVID-19によって2度も渡航中止となってしまったが、中国の技術を駆使したオンライン授業、つまり教育のDX化を体験する良い機会を得ることができた。

最後に、私の好きな荀子の言葉を借りる。「良農不為水旱不耕」。人が生きるうえでは、変化への対応と基本の徹底が重要であるということである。私なりの解釈ではあるが、歴史を大切にするのと同時に、未来への志向を忘れてはいけないということだと考える。また、時事的ではあるが、日本と中国が協力してCOVID-19に打ち勝ち、2021年の東京五輪・2022年の北京五輪が成功したらどんなに素敵なことだろうか。まさに、困難な状況に立ち向かう勇敢さを表す蟷螂之斧の精神の発揮を期待したい。

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