「模倣」のその先へ

花島寿貴

率直に述べると、数年前まで私が中国に対して抱いていた印象は「模倣」のただ2文字に過ぎなかった。丸い2つの耳は見覚えがあるが、夢の国の住人とは思えないほど疲れ切った目をしたネズミ。お腹に四次元ポケットらしきものを備えているが、ひみつ道具を扱うには少々頼りない印象のネコ型ロボット。11歳の頃にテレビを通して見たこれらの中国製品の記憶が私には根強く残っていた。また、当時は今よりも電車の中吊り広告が多かった。隅から隅まで文字に覆われた週刊誌の広告は、電車通学中の小学生の私には刺激的だった。ひとつの車両にひとつは「10年後に崩壊する中国経済」なんて広告があったのを覚えている。当時の私にはそれらの記事を本気にしている部分もあった。私が触れてきた中国に関する情報は、ひとつの他国をどこか貶めるような視点を持ち、どこか痛快に書かれているものがほとんどだった。結果として、あまり中国に関して知識を持ってはいないが、ネガティブな印象を抱いている人間に私は育った。

 そんな私だが、今では中国に関して勉強し、まだ行ったことのない土地に思いを馳せる日々を過ごしている。先日小米のスマートフォンに乗り換えた時はこの上ない高揚感を覚えた。強烈な知的好奇心をくすぐる存在として今の私の脳内に中国は存在する。

 このような変化はある中国人留学生によりもたらされた。高校の部活を引退してから毎日ジムに通い、すっかり筋トレにのめり込んだ私は真面目に勉強せず、サークル活動と筋トレで埋め尽くされた日々を送っていた。そんな中、大学1年生の夏休みにジムにて1人の中国人留学生と出会った。彼と話し、仲良くなっていくにつれ中国の方特有の距離感にとても魅力を感じるようになった。私は中学2年生の頃下町である葛飾区から豊島区に引っ越した経験がある。当たり前だと思っていた地域住民の密接なコミュニティが豊島区では一切無くなった。幼少期からご近所さんと仲良くしてきた私はこのような変化に大きな違和感を抱いていた。そんな私にとって彼の距離感はどこか懐かしく、落ち着きを覚えるものだった。彼と話していく中で、徐々に中国の持つスケールの大きさに興味を抱くようになった。しかし、当時の我々の語学能力ではざっくりと物事の大枠を捉えることができても、詳細な話をすることは困難だった。もっと話をしたい、その一心で真面目に中国語を学習することを決めた。

 昨年の春のことである。複数の中国語科目を履修し、授業外でも自習を積極的に進め最速で中国語を習得することを決めた。あわよくば1年後には留学にも行ってしまおうと思っていた。しかし、ここで大きな障害となったのがコロナウイルスだった。大学の授業は全てオンライン形式を余儀なくされ、留学に行くことも困難となった。しかし、今まで腐ることなく勉強を続けることができたのはやはり留学生の彼の影響が大きいと考える。ジムで会うたびに様々な情報を用いて私の知的好奇心をくすぐってくれたため、何としてでも彼の話を理解しようと学習し続けることができた。現在では、大きな目標としていたHSK6級、中検2級に合格し語学だけでなく政治、経済などの面からも中国に関して学習している。

 今最も興味を抱いている中国のトピックは「新型インフラ」だ。既存のインフラと新規のインフラを組み合わせることにより更なるQOLの向上が見込まれるこの分野は我々の生活を根底から覆すような変化を生むのではないかと考えている。また、我々大学3年生は現在就活に向けてインターンに参加する時期に差し掛かった。どんな企業に就職するのかはまだわからないが、日本企業と中国企業の架け橋になることにより新型インフラの発展を支える人材になりたいと考えている。もしそのような仕事に就くことができた際、「君の中国愛や中国語は『模倣』だね」と言われないよう、残りの大学生活も存分に勉強していきたいと考えている。

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