自分から

 阿部賀之子

 私が中国と触れ合うようになったのは、高校に入ってからです。それよりも前は中国についてあまり良い印象を待っていなかったし、興味を持つこともありませんでした。高校で中国語を学ぶようになってからは、中国の知らなかった部分が見えてきて、中国への興味が日に日に増えてるように感じます。そしてこの夏、私はある日本人と中国人とのかかわりからある一つのことを学びました。

 先日、東京オリンピックが開催されました。連日、いろいろな競技が行われ、テレビでは競技の中継や特集が放送されていました。オリンピック競技の中で中国というと、ほとんどの人が真っ先に卓球を思いつくでしょう。実際、卓球は中国の国技になっていて、中国の選手は世界トップレベルで、今期オリンピックでも卓球全種目で表彰台入りを果たしています。しかし、日本の選手も負けてはいません。男女混合ダブルスでは、水谷・伊藤ペアが中国を破り、優勝しました。また、女子団体の決勝戦は大熱戦でした。

 オリンピックが終わってから私は、伊藤美誠選手の密着特集がテレビで放送されているのを見ました。伊藤選手は20歳という若さにも関わらず、日本のエース的存在です。そんな伊藤選手のライバル選手は中国人の孫穎莎選手です。孫選手も伊藤選手と同じく20歳で、ここ数年で世界ランキングを大きく上げ、中国のホープとして期待されているそうです。去年11月に伊藤選手は新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めが効かず、日本国内での移動も躊躇われてしまうような中で、中国に遠征に行きました。そして、孫選手と合同練習を行ったそうですが、このことは極めて異例だそうです。なぜなら、世界トップレベルの選手どうしが一緒に練習をすることは、互いの手の内を明かすことになるからです。しかし伊藤選手は、コロナウイルスによって試合もなくなり、練習相手も限られる中、中国人選手の質の高いボールを受けられるまたとない機会、そして何より、ライバル選手が自分と練習をしたいといってくれたことがうれしく、合同練習を受け入れたそうです。練習中、孫選手が通訳者に伊藤選手と打ちたいと伝えてほしいと頼んだり、お互いが「もう一回」と言い合いながら繰り返し練習をしていました。練習の合間の会話では、伊藤選手は中国語が堪能ではないながらも、通訳を挟まずに好きな食べ物の話などをし、言葉の壁を越えた交流が生まれていました。伊藤選手は「孫選手がいたからこそ、自分もここまで来れていると思う。」と話し、孫選手も「伊藤選手というライバルがいることで、自分を高めて、不断に進歩していくことができる。」と話していました。

 このように互いをライバルとして認め合い、互いに刺激を与えあっている2人の選手を見て、国も違い、言葉も思うように通じなくても、2人は卓球というものでつながり、互いを認め、尊敬しあっているからこそ成り立つ関係なのかなと思いました。そしてこのことは、ほかの誰にでも同じだと思います。互いに認め合って、互いに理解し合おうと思えば、たとえ言葉が通じなくても、相手とつながることができます。このことを2人から学びました。この学んだことから私は、一つ後悔があります。先日、高校で、リモートで中国の学生と交流できる機会があったのですが、自分の中国語が伝わらなかったらどうしようという不安から参加しませんでした。これは相手を認めるどころか、拒否をしていたのだと気づきました。拒否や否定からは何も生まれません。まずは自分から相手を認め、そこから相手を知っていく姿勢が大事なのだと学びました。いつか同じような機会があったときには、たとえ自分の中国語が拙くても相手は理解してくれると信じ、伝える努力をしたいです。その次の機会までに中国語を実践で使えるレベルまで学び、いつか伊藤選手と孫選手のような関係を築いていけるような中国の友達を作りたいです。

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