科学技術の国

真﨑雄大

中国に対して抱いているイメージは人それぞれ違うと思うが、私の中での揺るがないイメージは、中国が「科学技術の国」だということだ。

私は、幼少のころから科学に強い関心を持っていて、将来は研究の道に進みたいと考えていた。小学生時代、社会科の教員に、日本が戦後の苦しい状況から科学技術の力によって復興、発展し、今の日本ができたことを教わった時は、日本の科学技術のすばらしさを誇らしく、また、自分もそうした科学技術で日本をけん引できるような人になりたいと思ったものだ。それから、中学校に進学したわけだが、この中学生で参加した中国での研修が私にとって一つの転機となる。

私の通っていた中学校は、中国の中学校と交流があり、毎年学校の代表者を募り、中国への研修を行っていた。一度も海外に行った経験のなかった私は、興味本位で応募をし、有り難いことに交流団の一員に加えていただくことになった。向かった都市は、中国の中でもひと際発展した町である「上海」だった。空港を飛び立ち、いざ上海につくと、そのスケールの大きさに圧倒されたのを今でも覚えている。立ち並ぶ高層ビルは、空を小さくし、美しい光が飛び交う中心部の夜景は、写真で想像していたものをはるかに超えていた。なにより、当時、世界でも珍しかった上海リニアへの搭乗体験は、中国の技術の高さを私に深く印象付けるものとなった。

そして、迎えた上海曹楊中学校訪問。違う国の中学生と交流するのは初めてで、緊張していたが、彼らは私たちをとても温かく迎えてくれた。そこで、私はある男子生徒と出会った。自己紹介で彼は、将来の夢は科学者だと言った。初めて出会った異国の同志であり、彼は自分の興味のあることや、面白い知識をたくさん紹介してくれた。そして、何よりも私を驚かせたのは、彼が学校の近隣の汚染された河川を浄化するための研究をしているということだった。具体的には、河川の水を一部学校の敷地に引き、学校と協力しながら制作した浄化槽で汚れを取り除いた後に、また川へ戻すというものだ。彼は自ら問題発見、課題設定をし、その解決に向けてのアイデアをだして、そしてそれを実行していた。彼はすでに私のはるか先を行く科学者だと思った。その他にも、外交官になりたいと言っていた生徒は、私に流ちょうな日本語で話をしてくれたし、中国の大気汚染について考える授業に参加させてもらった時には、彼らはすべて英語での活発なディスカッションを行っていた。この研修で、私は意識の違いを強く感じ、自分も変わらなければいけないと思うようになった。

世界の科学技術や研究力に関する情報を調べてみると、その上位を占めるのはやはり中国だ。人口が多いのだから、研究論文の数が多く、実績も多いのは当然だと考える人がいるのも理解できるが、私は研修での経験を通して、中国の実績は、学生たちの問題意識や学ぶことへの意識の高さによって生まれているものだと思えてならない。

高校に進学してから、私はそれまで以上に熱心に学習に取り組むようになった。新型コロナウイルスの影響もあって、学校に通うのが困難な時期もあったが、その時間は、より専門的な知識を身につけるための有意義な時間にもなった。また、大学の研究プログラムに応募し、約15か月間研究室に配属されての研究活動に取り組むなど課外活動にも力を入れるようになった。その変化の要因には、やはり中国の学生たちから受けた刺激と彼らへの対抗心がある。彼らは、ともに科学技術の発展を目指す同志であり、決して負けたくないライバルにもなった。そして、いつか彼らと肩を並べて、自国のみならず世界全体が抱える諸問題に共に立ち向かっていけたらと思う。日本と中国が、互いに競い、高めあえるような関係であってほしいと切に願っている。

人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850