暖かさに触れた一週間


小嶋 心

 上海環球金融中心の100階から見た夜景に自分の小ささを感じて胸が締め付けられたのが今でも印象深く蘇ります。

 怒涛のような訪中一週間の旅でした。北京都市空港に到着した時、不安は頂点に達していました。聞き慣れた日本語は消え、どこか顰めっ面をした中国人の方が私の前を清掃しながら通り去りました。「この国の人とはきっと自分は合わない。帰りたい」絶望感に帰国までのタイムリミットを確認しようと腕時計を見つめたのは、到着15分後の出来事でした。

 しかし、一週間後にはあれ程刻む腕時計の秒針の早さに焦りを感じるとは思いもしませんでした。

 日を追うごとに深まる友情、絆。当初の不安は実体のない訪中団との絆によりかき消され中国の街並みが自然と眼に映るようになりました。この一週間は、遠目で見れば笑いの絶えない研修旅行です。それは、訪中団は時として、南京大虐殺遭難者記念館での辛い歴史に向き合う曲面や、渋滞の中でのバス移動など筋書き通りとはいえないシーンも儘あったからです。とりわけ、南京大虐殺遭難者記念館訪問では、中国語で書かれた説明文の中にようやく見つけた日本語は、「日本人、百人斬り競争」の見出しをつけた朝日新聞の記事。その場から消えたいと思いました。この場にいることが中国人に不快感を与えていないかとしばしば見学に来ていた中国人の顔色を伺い確かめました。思わず目を覆いたくなるような展示の数から私は歴史の重圧に気圧されそうになりました。しかしながら、隣には必ず真剣にメモを取る団員がいました。同じように泣きそうな顔をして俯く団員がいました。頼れる和崎先生をはじめとする、先生方がいました。シャッターをきり続ける人民中国の方々がいました。中国への関心をキーワードに巡り合った私たちは、中国において如何なる状況でも強固な絆で結ばれ、リアルな中国を受け止めることができました。

 私の元には今も天津外国語大学の学生からWechatが届いています。訪中前までの自分には考えられないことと思います。これまでマスメディアの報道から日本側の立場だけで中国を捉え日中友好は机上の空論に過ぎないと軽くて考えていました。そして、中国人をどこかでルックダウンしていました。しかしながら、たった15分間の天津の滞在時間の中でも直接出会うことでこうして信じられない程強固な絆で結ばれた今、人と人との繋がり、絆というものは国境に制約されることなどないのだと感じます。私が研修旅行から帰った今、チャイナロスが激しくて取るもの手につかないのは中国の美しい街並みや歴史、文化の余韻に浸っているのはもちろんですが、何より今回の研修旅行で得られた絆に未だ酔いしれているからだと思います。一週間を境にまた別々の道を歩み始めたメンバーに想いを馳せると思わず涙腺が緩みます。

 SWFC100階の窓は煌々と輝くビル群を映し出しますが、その高さのあまりその下で行き交う人々を消してしまいます。ここからでは、人を点としても確認できません。100階から見下ろす自分もまた下からは見えないのだと思うと自分の存在の小ささに切なさを感じます。しかしながら、今回の訪中で築き上げた絆は、夜景の見える範囲よりはるか広い日中両国にまたがり、互いに心と心とをつなぎとめると思います。日中両国の人の暖かさに触れた一週間でした。



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