教徒の精神のよりどころ

 

ムスリムは礼拝の前に毎回、しっかりと小浄を行う

 

  東関清真大寺は目下、中国で参拝者が最も多いモスクだ。管轄する教徒の人数は、イスラム教全体を見回しても五大「ジャマート」(アラビア語、もともとの意味は「集団、集落」)に入る。モスクの僧侶の話によると、東関清真大寺には毎日およそ五、六千人が礼拝に来るという。アルジュムア(金曜日)になると、参拝者は約二、三万人になり、ラマダン明けの祭日には十五、六万人に達する。大殿が混み合って身動きできないだけでなく、広い露天の広場ひいては街でさえも参拝者でいっぱいになり、かなり壮観な光景になる。

 教義に従って、ムスリムは毎回礼拝の前に沐浴をしなければならない。沐浴は大沐浴と小沐浴に分かれ、大沐浴は大浄(グスル)とも呼ばれ、分かりやすく言えば入浴のことだ。一方、小沐浴は小浄(ウドゥー)とも呼ばれ、顔や腕を洗い、口や鼻、排泄器官などの部位をきれいにする。小浄のときは、腰掛けに座って、「湯瓶」(ムスリム用語、小浄専用のつぼ)を使って水洗いすれば良い。イスラム教では、大浄、小浄は体の汚れを洗い落とすと同時に、心の中の罪を洗い清め、悔い改めて生まれ変わるプロセスでもあり、外から内までの洗浄だ。ムスリムは毎日少なくとも小浄を5回行い、大浄は普通3日に1回行う。

 毎年、ラマダンは東関清真大寺がチャリティー救済イベントを行う重要な時期でもある。モスクではムスリムの企業家たちが寄付した慈善金を全て食材の購入に当て、生活が困難な家庭に与える。僧侶は次のように話してくれた。「今年のラマダンには合計550世帯が東関清真大寺に来て無料配布の食材を受け取りました。回族のほか、漢族、チベット族、トゥー族、サラール族もいました。われわれの慈善活動をより多くの人に享受してもらいたい。イスラム教の信者かどうかは関係ありません」

 モスクはムスリムの日常生活と密接に関係しているだけでなく、この世を去る際にも、まず最初にモスクでムスリムの葬儀を行う。東関清真大寺はこの世を去る全てのムスリムに全行程無料の葬儀サービスを提供している。僧侶はわれわれに、ムスリムの葬儀は世界で最も簡単な葬儀だと言った。第一に、速さを重視し、亡くなったその日に埋葬する。第二に、薄さを重視し、3丈6尺(約12)の白い布だけを必要とし、遺体をきれいに洗った後、その白い布で包んで、葬儀を行う。ひつぎもそれを安置する部屋も花輪もない。第三は土葬で、人は土から来て土に帰る。ムスリムには公墓があり、公開埋葬を行う。

 このように、モスクはムスリムの信仰の堡塁、彼らが安心し鼓舞される聖殿、彼らの慈善救済の場所として、ムスリム世界の精神的存在をつないでいる。