海を渡った聖なる白い光

袁舒=文

陳剣=写真

 蟳埔村に並ぶ「蚵殻厝」は海上シルクロードを通じた泉州の対外貿易が繁栄した歴史を物語っている。カキの殻の数が多ければ多いほど、それほど多くの商品が輸出されたことが分かる。その中でも、徳化の白磁器は、世界中の人々に愛された「メード・イン・泉州」の商品の一つだ。宋代から明代にかけて、白磁は海上シルクロードの「東洋の宝」として人気を誇り、「一箱の白磁は一箱の白銀に相当する」と言われたほどだった。

 徳化白磁彫刻の許氏一家の6代目で、国家無形文化遺産伝承者でもある許瑞峰さん(52)は、「徳化の窯で焼かれた白磁は玉のように温かみがあり、磁器は真っ白ですが、決してまぶしい光沢ではなく、マットな透明感があります。そして光を通しやすい性質で、そこから透ける色は穏やかなベージュ色です」と紹介してくれた。

 

塑像の形を微調整する許瑞峰さん(写真・袁舒/人民中国)

 中国人は儒教の教えを重んじ、派手な明るい色を使わず、純白を好んできた。そのため祭祀用の道具も白色のものが多い。これは日本でも同様で、白い木材で祭祀用の道具を多く作ってきた。人々は自然と白い磁器に憧れたが、高温焼成した磁器は酸化、還元などの作用で色が濃くなり、なかなか白色を保つことはかなわなかった。だが後に、徳化一帯で粘度の高い白いカオリン層が発見された。カオリンで作られた磁器は、白くてキメが細かい。また、カオリンは粘度が高いため、彫刻を作るのにも適している。これによって、世界的に有名な徳化の白磁観音像が登場したのだ。

 

白磁の塑像「浄瓶観音」(写真提供・許瑞峰)

 観音菩薩像のふくよかな体つきと慈愛に満ちた表情は、白磁の淡い光沢の下で、より一層見る人の心を打つ。元代、徳化地域では大量の観音像を作り、海外に向けて販売していた。仏教徒は徳化白磁の神聖な美しさに驚嘆し、磁器愛好家やコレクターはその巧みな技術に魅了された。これらの作品は、泉州の人々の宗教と芸術に対する追求を表現しているだけでなく、東洋の磁器彫刻の美しさを広く世界に伝えることとなった。