知らなかった日本の貧困——『貧困を救えない国日本』の読後感

霍明月上海外国語大学

 

 

 日本は経済が発達して、生活水準が高い、特に社会保障と医療制度が完備、格差はより小さい国だと、私はずっと思っていた。しかし、最近では『貧困を救えない国日本』という本を読んだ後、日本でも貧困問題がかなり深刻であることに気づいた。その上、問題を解決することは、おそらく途上国よりもっと難しいと言える。それは日本の貧困問題は「見えない」からだ。

 この本の中で「貧」と「困」を分けて考えるべきだという論点はすごく有意義だと思う。「貧」はただお金を持っていない状態だが、「困」はお金がない上に、どうしてもこの境遇から出られなくて、現状が継続する状態である。「貧を放っておくと、困になる」。政府が「セーフティーネット」(最低賃金制度や雇用保険制度や生活保護制度など)を作って、ある程度貧困人口の拡大を守れているが、なぜ現実には、まだそれほどたくさんの人が社会の最下層にいるのか? それはおそらく日本で多くの貧困層は隠れていて、政府や国民に気づかれなくて、徐々に「困」になっているからだと思う。

 本書によれば、日本の相対的貧困率は15.7%。相対的貧困とは「ある社会の中で生活する際に、その社会の標準的な生活習慣や行為を行うことができない人の割合」。つまり、「そのまま放っておいたら餓死してしまいませんというレベルの貧困」。その割合は先進国の中でかなり高い。なぜ? 一つの理由は「政府から家計,個人への給付である社会支出が少ないこと、特に生活保護などの低所得者への移転が少ないことである」。もう一つは、「日本には本当の貧困人口がいない」と思っている日本人が多いので、若い女性がネットカフェで暮らしていることや食べ物のため万引きをする貧困子供などの社会現象を重視していないからだと思う。つまり、日本の貧困問題のキーワードは「見えない」だと思う。

 また、NHKの「女性たちの貧困 新たな連鎖の衝撃」というドキュメンタリーを見て、ショックを受けた。「身なりなどを見れば、仮に貧困であってもそう簡単にわからないわけだ。つまり、若い女性の貧困というのは、見えにくくなっているわけだ」。若い女性である私は非常に理解できる。その原因は単に「若い女性がおめかしを好むとか体面のための強がり」にまとめるわけにはいかない。その理由はこの社会はますます個人の尊厳を強調し、また、女性がちゃんと装いをしなければ、仕事はできないという男女偏見があるからだといえばいいと思う。  

 それに、多くの日本人は「貧困」に対して誤解がある。例えば、貧困の理由は貧困層のせい、もし十分に努力すれば、決してこんな貧しくならないという思いがある。(特に社会に入っていない若者はそう考えがちだ。)最下層の貧困層は「頑張ることそのものができない」という事実の認識がない。そのほか、ひとり親世帯よりふたり親世帯は貧困問題の割合が少ないか? 実はふたり親世帯の絶対数がずっと多いので、貧困の割合は少ないが、貧困世帯数は全然少なくない。貧困層に厳しい意見が多いし、一部分の貧困層に気づいたけど、ほかの貧困層の存在は無視する、それが日本の現状だ。

 『貧困を救えない国日本』であるけれども、作者たちは、貧困解決の第一歩は、実態を多くの人に知ってもらうことだとしている。そのため、「納得してもらいたい相手によって、様々な論を使い分けます、相手の価値観に合わせていく。」ことが重要だと思う。私は完全に賛成する。例えば、私たち大学生にとって、社会格差に気がつかないと、貧困層に厳しい意見を持っている可能性が高い。ここで、ひとつ名言を思い出した。

「誰かのことを批判したくなったときには、こう考えるようにするんだよ」

かつて父は私にそう言った。

「世間のすべての人が、お前のように恵まれた条件を与えられたわけではないのだ」と。

 このように、「見えない貧困」は将来他の国にも起きる恐れがある。今の中国は社会保障制度が不備だ。毎年年金の赤字があるし、医療保障も狭いし、保険制度もなかなか普及していない。その上、不動産の価格は世界一高いと言える。

逆に、中国の若者たちは消費主義に盛り上がっている。特に大学生は身仕舞いを重視し、全然アルバイトしていなくても金遣いが荒い人も結構いる。それはIT業と金融業の発展による繰上げ消費(クレジットカードやローンなど)が容易になっているからだと思う。もし何か問題が起きたら、貯金を持っていない若者たちはどうすればいいのか。そう見れば、中国の次世代は日本の若者より早く「隠れた貧困」の道に踏みこむ傾向があるのではないかと心配になる。

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