知られざる改革開放における中日協力の歴史

蒋超儀 中国人民大学

 

 

昨年、中国は改革開放40周年を迎えた。改革開放政策のおかげで、中国がこの40年間、大きな発展を遂げたことは、多くの人が認めている。しかし、政策実施の舞台裏に、官民問わず数多くの日本人が改革開放を支えたことは、知る人が多くはない。私もつい最近、「中国改革開放を支えた日本人」というNHKのドキュメンタリーを見て初めて知ったのである。

今年2月に放送されたこのドキュメンタリーは、あまり知られていない、初期の改革開放事業に力を入れた日本人にスポットを当てている。その中には、日本政財界のトップもいれば、建設現場の日本人技術者もいた。例えば、新日本製鉄の稲山嘉寛会長と経団連の土光敏夫会長は、1978年の鄧小平訪日等の中日交流をバックアップした。所得倍増計画作成の中心人物であった大来佐武郎氏は中国政府の顧問となり、今まで計画経済しか知らなかった中国の高級幹部向けに世界経済の「啓蒙」をした。建設機械メーカー小松製作所(現コマツ)の技術者7人は北京内燃機総廠(北京内燃機工場)に派遣され、現場で国有企業の改革を支援した。

私はこのドキュメンタリーを見て、このような中日協力の歴史の存在に深い感銘をうけた。一番印象に残ったのは、1981年に起きたプラント輸入契約中止という事件だ。改革開放の最重要プロジェクトといわれる上海宝山製鉄所は197812月に着工し、その建設に新日本製鉄を始めとする千社を超える日本企業が参加した。ところが、資金不足等の原因で、中国側は一方的に契約中止を決めたのである。しかし、通告を受けた日本側は腹を立てて中国のことを放っておくことにしたのではなく、協力するから真正面から問題に対応しようと中国側に働きかけた。プロジェクト再開のため、大来佐武郎さんや土光敏夫さんは自ら北京を訪れた。実は私は、当時同行した酒井拓夫さんと同じ疑問を持った。「中国側が説明に行くべきなのではないか」。だが、土光さんは、「中国が困っては、こちらが行かなければならない」と思っていたのだ。

なぜ数多くの日本人がこれほど熱心に中国の改革開放を支えたのか。その答えもドキュメンタリーの中にあった。まずは、土光さんのような戦争を経験した日本人として恩返ししたい、或いは償いたいという気持ちとは切り離せないと思う。それに、中国の安定と発展はアジアないし世界の安定と発展に繋がると考える日本人も少なくなかっただろう。一方、中国側が改革開放を断行する決心も要因の一つなのではないか。中国政府は日本人との協力に対する一般中国人の心理的な抵抗感に打ち勝って、記者会見で発展の遅れを自認したり、極秘の経済資料を日本関係者に見せたりした。改革開放への協力を求める中国人の誠意はちゃんと届いただろう。

正直に言えば、ドキュメンタリーを見て私は驚いた。中日関係にこのようなハネムーン期があったとは知らなかったのだ。私にとって、中日関係というと、むしろ敏感、紆余曲折といったキーワードがまっすぐに思い浮かぶ。

改革開放を通して中国はGDP世界第二位の国に成長し、経済上日本と肩を並べるようになってきている。しかし、それにひきかえ、両国民間の距離は離れつつあるように見える。実際2018年に中国外文局と日本の言論NPOが共同実施した第14回中日共同世論調査の結果では、相手国に「良くない印象を持っている/どちらかといえば良くない印象を持っている」と答えた人は中国にも日本にも半分を上回ったことが分かった。戦争が遠い昔の話となり、中国より欧米の文化に親しむ日本の若い世代には、土光さん世代の中国への恩返しや償いの思いは既に分かりにくいものであろう。また、高度成長の中育ってきた私たち中国の若者にとっても、中日関係の友好ムードより両国関係の不安定を反映する情報のほうが目につきやすい。このままでは、両国の若い世代間の距離もますます開く。しかし、中日関係の未来の担い手は、まさにこの私たちである。いろいろ考えながら、40年前に中国の発展に一緒に取り組み、そして今も交流を続ける両国の技術者たちの姿が現れた最後のシーンを、私は複雑な思いで見つめた。

「相手国に対する良くない印象の理由」の一つとして、「歴史問題」はよく挙げられる。歴史は忘れてはいけないものだ。戦争の歴史はもちろん、友好協力の歴史を知るのも大事であろう。40年前の改革開放事業における中日協力の歴史はこれからの両国関係発展に貴重な経験を提供している。

ドキュメンタリーの一言は今でも私の心に響いている。

「国と国との困難に直面しながらも、人々は互いを理解しようという努力を続けてきました。」

理解する意欲。歩み寄る努力。それこそが中日関係の未来を切り開く重要なカギだと信じる。



 

 

 

 

 

 

 

人员赴往一线,帮助北京内燃机总厂进行国有企业改革。

我相信这两者才正是开启中日关系“未来之门”的锁钥。

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