隠された愛情

李佳儿(恵州学院)

 

 

次々と石を水に投げるように、さざ波の後、この水は最終的に平静を取り戻しました。

——「桜、桜、会いたいよ。私は風、あなたを包んでいるよ」。これは私が本当に好きな歌『さくら~あなたに出会えてよかった』の歌詞です。この曲は西加奈子の小説『さくら』に触発されて作ったそうです。この曲を聴くたびに、一体どんな小説からこんな美しい歌を作れるのだろうかと想います。私はこの小説を読みたい!そこで図書館に行って、その小説を借りることにしました。そしてこの小説を読み終わった後、それまで持っていた私の日本の家庭の印象とは全く違う、そう思いました。

小説『さくら』は、「さくら」と呼ばれる犬が家族の一員になったときから始まり、愛情あふれる母親、大人しい父親、完璧な兄、お洒落な妹、そして最も平凡な「私」で構成された家族の物語です。この美しい家族の中で、私は素晴らしい子供時代を過ごしていましたが、すべては優しい兄の交通事故の後、完全に崩壊しました。自慢の兄は下半身不随となり、かっこいい顔には無惨な傷が残りました。いつも星のように輝いていた兄は、このような不幸に耐えられず、「ギブアップ」の言葉を残して自殺しました。美しい母親は自己放棄になり、勤勉な父親はいたたまれず家族を捨て行方不明、楽観的な妹はその性格が変わって冷たくなりました。家族はバラバラになりました。しかし最後には、家族は除夜に、みんなで力を合わせて、今までの障壁を乗り越え、新しい年を迎え、再生への道を歩き出します。

この小説は、普通の言葉を使いつつも繊細な描写で、家族のメンバーたちの微妙な変化を細かく記述しています。主に、人生に転落し、不幸なことに出会っても、楽観的に現実に直面すべきだ、ということを私たちに伝えていると思います。しかし、私はこの小説に書かれている家族に、私自身の見解をみつけました。それはその家族の付き合い方です。私が持っていた日本の家庭の印象とはとても違ったので、はっきり気づきました。

中国では、両親は子供を過剰に愛します。中国の親たちは、子供に多くの愛情を与え、結果、子供の成長に悪い影響を与えています。子供を甘やかせすぎて、子供をのさばらせます。そして、過度の干渉を行えれば、両親に頼りやすい子供になります。この家族関係は中国では「相互依存」と呼ばれ、中国の家族の特徴です。私の知る限り、日本は家族関係が薄い国です。両親と子供は、隣人のように節度を持って接し、中国の家族ほど親密ではありません。しかし、このよそ行きの関係は、本当に日本の家庭に愛情がないことを表しているのでしょうか。『さくら』を読んだ後、私はそうは思いませんでした。日本人は形よりも本質を重んじます。子どもが成長するにつれて、両親は子供を自分で成長できるように、学べるように手放すことを選びます。そして、ほとんどの日本人の若者は、両親の庇護の下に、責任を逃れるとか現実を無視すると言う行為では幸福を得ることができないという見解を持っています。自分で争わなければなりません。家にいなくても、家族の切ない絆がいつも強いから、家族への愛は変わりません。これはほこりっぽい本のように、少しでも読んで見れば、その中の美しさを感じることができます。この小説で描かれているように、「私」は何年も家にいなくても、戻ってきた後、家族は生気がないように見えますが、実際には、その家族愛はほこりに隠れています。サクラは病気になり、家族は大みそかにペット病院を探しに必死に出かけました。このような付き合い方も、一種の愛の表現ではありませんか。日本人の家族観は強くないというよりは、日本人の家族愛はもっと繊細だと言うべきだと思います。

  中国の表面的な愛情にしろ、日本の隠された愛情にしろ、どちらも家族への愛情です。人生は、意外と不幸が多いですが、家族がいれば多彩になれます。あの日、サクラの尻尾に落ちた桜の花弁のように、神様は私たちにボールを投げて、平和な生活に波をもたらしますが、苦しい人生の季節を過ごした後、お互いの手を取り合うことができれば、これは本当の家族と言えるでしょう。
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