氷上で行う収穫の「宴」
 長白山(中国の東北地方で一番高い山)の頂から勢いよく流れ出した松花江は、吉林省の全域を通って、その北西部にある松原市で嫩江(松花江の北の源)と合流する。豊かな水資源は畑と牧場を潤すと同時に、長い歴史を持つ多彩な文明を生み出している。
 
 「前ゴルロス(前郭爾羅斯)」は、モンゴル語で「江南」という意味だ。松原市の中部に、この名前を持つ蒙古族自治県がある。中国語で「江南」といえば、長江以南地域の「小さな橋、流れる水、古風な民家」といった繊細な美しさを連想させるが、モンゴル語の「江南」――松花江の南岸にある前ゴルロスはそれとは違い、壮麗で雄大な美しさそのものを表している。ここでは、広い草原で独特な古い音楽を鑑賞したり、氷点下30度の寒さの中、凍りついた湖の上で収穫の「宴」に参加したりすることができる。
 11月中下旬ともなると、松原はすでに凍りつくほどの寒さに見舞われる。前ゴルロス大草原の「査干湖」では、氷と水の対決が始まる。
 月の光に照らされ、移動している氷はかすかに青色に光っている。岸まで流された氷は砕け、また湖水に溶ける。このように何回も繰り返して、流れる湖水はようやく凍り、白い氷の層が岸から湖の真ん中まで広がっていく。月が沈む頃に見渡せば、数百平方にわたる湖面全体に薄氷が張り、滑らかな氷の鏡のように見える。
 漁師の張把頭(58)は自宅で道具を手入れし、間もなく来る一年で一番忙しい時期のために準備をしている。「今はまだ薄氷ですが、1カ月後に氷の厚さが40くらいになると、冬捕(冬の漁)が始まります」。査干湖の方向を眺める張把頭の目は、期待の光をたたえている。
 張把頭の本名は張文さんといって、彼は現地の冬捕チームの「漁把頭(技術管理者)」だ。彼の言う「冬捕」とは、現地の漁師たちにとって一年で一番規模の大きな漁である。遼の時代から、査干湖は天然の漁業の聖地だ。冬に収穫した魚は保存輸送がしやすいため、冬捕の習慣は現在まで伝わることとなった。今でもここの人々は伝統的な漁業のやり方を守っている。千年継承されてきた漁業文化が各地の観光客をも引き付けている。

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