東アジア文化交流をつなぐ絆

 

毎年4月20日前後の穀雨の時期、各界の人々が会稽山の麓に集まり、公祭大禹陵典礼が行われる


 紹興の対外交流には長い歴史がある。ある研究によると、長江中・下流域以南に暮らす古越人の移動が有史以前に中日両国の交流をもたらしたという。統計によると、日本には禹に関する遺跡が132カ所あり、朝鮮半島には禹に関する地名が8カ所あるという。「越」の字を含む日本の地名は、「越前」「越中」「越後」などさらに多い。日本語の「1、2、3、4」の発音は紹興方言と似ている。今日でも、両国には言語や文化、宗教、習慣の面で相通じる部分が数多くある。明仁天皇の年号「平成」は『尚書・大禹謨』の中の「地平天成」という句から取られており、紹興禹廟の屋根の上には今でもこの4文字がはめ込まれている。



大禹陵の全景(写真・袁雲)


 紹興は昔から物も人も豊かで、経済が発展しており、会稽銅鏡や越窯青磁、紹興黄酒、シルク、茶葉などの物産が、浙東運河を経て、海上シルクロードを通って、世界各地に次々と輸出されていた。唐代には、日本の高僧・空海や円珍が紹興に来て修行し、仏典を日本に持ち帰った。紹興嘉祥寺の吉蔵大師が創始した三論宗は、高麗の名僧・慧灌によって日本に伝えられた。明代、陽明心学が朝鮮と日本に伝わり、また一人の紹興の大学者・朱舜水が日本に渡って儒学を伝え、日本の水戸学に大きな影響を与えた。近代に至り、秋瑾や陶成章、魯迅、周恩来ら多くの紹興の名士が日本に留学し、救国の道を模索し、多大な影響を残した。越王殿後方の桜の林には、中日友好の物語が秘められている。紹興は東アジア文化交流史上に、鮮やかな軌跡を残している。

 大禹文化や古越文化、書道文化、陽明文化、魯迅文化、伝統劇文化、黄酒文化は、紹興の独特かつ鮮明な文化的記号で、中華文明における宝でもあり、東アジア文化交流において重要な絆の役割を果たしてきた。1980年代以来、紹興は一連の盛大な文化イベントを開催し続けている。

 中国には、北に黄帝陵があり、南に大禹陵がある。大禹は死後、会稽に葬られたが、その後すぐに禹陵を守り、禹を祭る行事が始まり、数千年も途絶えずに続いている。大禹祭典民俗活動は国家レベルの無形文化遺産リストに登録され、毎年国内外の各界の人々が大禹陵を祭る行事に参加している。

 蘭亭は書道の聖地で、紹興は1985年に蘭亭書道祭の開催を始めた。毎年旧暦3月になると、各国から来た大勢の書道家が蘭亭に集まる。彼らは書聖に参拝し、古跡を訪ねたり、曲水の宴を開き、酒を飲んで詩を作ったり、揮毫して、書道の技で交流したりする。紹興は酒と陽明のふるさとでもあり、毎年黄酒文化祭と国際陽明心学大会を開催している。



毎年旧暦3月、国内外のゲストが蘭亭に集まり、曲水の宴を行い、酒を飲みつつ詩を作る(写真・袁雲)


 2007年の中日国交正常化35周年の際には、紹興の越劇団が日本の有名な文学作品『春琴抄』を越劇に改編して上演した。新世代の越劇俳優が主演を務め、東アジア巡回公演は各国の観客から好評を得た。

 魯迅は紹興の「名刺」であり、中日友好交流の重要な絆でもある。17年に紹興は「魯迅と夏目漱石の時空を超えた対話」フォーラムを開催した。近年、紹興は「大家対話」シリーズイベントを打ち出し、前後して魯迅とユーゴー、トルストイ、タゴール、ダンテなどの各国の文豪との時空を超えた対話イベントを開催し、中国と外国の文明間の交流と相互参考の場をつくり上げた。



「魯迅とタゴール――大家対話」が2016年に紹興で開催された。左から4人目が魯迅の孫で魯迅文化基金会会長の周令飛氏、左から3人目がタゴールの兄弟のひ孫でシンガポール国立大学哲学教授のサラニンドラナート・タゴール氏(写真・袁雲)


 1983年から紹興は前後して日本の福光町(現在の南砺市)や芦原町(現在のあわら市)、西宮、富士宮市などの7都市、韓国の麗水や大邸などの7都市と友好都市関係を結び、文化・ビジネス交流を毎年盛んに行っている。現在、600社以上の日韓企業が紹興に進出しており、紹興にとって最も多い商品・サービスの輸入先は韓国と日本である。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、昨年は中止になったイベントもあったが、感染症は友好都市同士が互いに手を差し伸べ合うことを遮ることはできない。「青山一道同雲雨、明月何曾是両郷(国土は離れているが、大空の雲や雨、月に国境はない)」ということである。



1992年に日本の天皇陛下に贈られた花彫酒(写真・袁雲)


 紹興は東アジア文化都市に選出された後、2021年を「文脈千年、尋夢紹興」の活動年とすることを決めた。「祝福・紹興古城過大年」イベントをスタートした後、公祭大禹陵典礼および『東亜禹跡図』編さん始動セレモニーを行い、蘭亭書道祭および中日韓書芸交流イベントを行った。さらに今後、魯迅生誕140周年記念シリーズイベントを行い、『故郷』発表100周年記念シンポジウムを行い、中日学生「教科書について故郷に遊ぶ――紹興」イベントを行う予定だ。一連の豊富で多彩なイベントが紹興という東方の水郷、悠久の歴史を持つ名都市の独特な姿を世界に示すことになるだろう。

 

(提供元未記載の写真は全て「紹興市無形文化遺産保護センター」提供)