時間を磨く職人達——『京都職人』を読む

 青島大学日本語学科2020安頔

 

 書店の本棚で偶然『京都職人』という本に出会った。京都は日本の古都として、伝統文化の雰囲気が濃く、「心のふるさと」と呼ばれている。文化伝承の道において、京都の職人達が重要な役割を果たしている。熟練した技術、工芸に対する追求、伝統産業への守護は、職人精神を体現している。著者の米原有二氏はこの本を通して、我々を職人達の仕事現場に連れて行って、彼らがいかに機械の冷たさに立ち向かっていたかということを伝えてきた。

 『京都職人』を読んで、日本で交換留学していた時代の京都の思い出がよみがえってきた。京都の街でぶらぶらと散歩したら、思わず店内の工芸品に目を奪われた。美しいペンダントに精巧なくみひもが結ばれている。このような編み物に、職人の手作りのエッセンスが凝縮されているということがわかった。細かいくみひもの中には、職人の仕事への追求、人生態度、働きに対する認識が満ちている。京くみ紐職人の大林芳雄氏は「所詮くみひもは主役にはなれないが、私の人生は「くみひも人生」だ」と語り、職人たちの尊厳とひたむきさがにじみ出ている。職人達は一生に一つの仕事しか務めないが、彼らにとって、仕事がうまくいくかどうかは、自分の人格の栄光に直結する。その尊厳があるからこそ、彼らは時間を磨くように自分たちの仕事に対して極めて真剣であり、並外れた芸術を追求し、どの作品に対しても完璧なものを目指すことができた。無責任に品質の悪い製品を市場に流通させれば、職人の恥になるとされている。

 日本の工芸品は高度の精巧さで広く知られており、その背後で支えているのは職人精神である。この本を読んで、私は更に深く日本の職人精神――一糸乱れず、初心を忘れずという一貫していることを体得した。冷たい機械の産物と比べて、手芸品は人間味があり、唯一無二のものである。それらに凝集しているのは、長い時間のエネルギーだけでなく、職人達の温かい心でもある。機械化が進み、人々が便利さを求めている今日、工芸品は複雑で時間がかかるが、この本に記録されている職人達は職業への愛情、伝統工芸へのこだわりを持って、最後まで諦めず、浮き沈みの激しい社会で目の前のことだけに集中する。仕事を完璧にこなし、極致に達することが、生命そのものへの肯定であり、日本の職人精神の重要な源であろう。この本を読んで、職人達のひたむきさと情熱を理解しはじめ、日本の職人精神を深く感じた。

 外国語学習者として、私の初心は中日両言語をマスターし、中日文化の架け橋になることである。最近は暇な時間を利用し、中国語の先生を務めている。そのうち、中国に興味を持っている日本人がたくさんいることに気づき、うれしく思うと同時に、中国語を教えることから始め、自分の理想を実現できるかもと意識している。私は職人達のように初心を忘れず、目の前のことに対して、心を込めて時間を磨くように完成しようと思う。

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