帯に咲き誇る花火

大連外国語大学日本語学院四年生 李翊菡

 

離れ離れになった姉妹が再会し、着物の帯をめぐって人々の想いが交錯してゆく...。川端康成の『古都』を読んだのは、大学一年生の時だった。四年生となった今振り返ってみると、ある目に見えない一本の「帯」が私の大学時代の思い出をすべて結んでいるような気がする。

『古都』を読んでからというもの、私はいつか「一度は綺麗な着物を着てみたい」と思っていた。めったに文化祭などの活動に参加しない私だが、着物が着たいという単純な動機から、勇気を出して演劇活動に応募した。そして文化祭当日、浴衣姿で舞台に立った私は、思ったよりきつい帯と眩しい照明に緊張していた。その時、突然観客席から「うわあ、綺麗な着物!」という声が聞こえ、どこからともなくやる気が出てきたのを覚えている…。勇気を出して自分の好きな文化を多くの人に紹介できたことを、今でも誇りに思っている。

三年生の時、私は日本に留学した。東京に到着して一か月後、念願の花火大会が開催された。会場へ向かう途中、浴衣姿の女性たちが電車に乗り込んできた瞬間、まるでかつての日本にタイムスリップしたかのようだった。花火が夜空を照らしたかと思うと、色とりどりの着物の帯も照らされ、花が咲き誇るかのように見えた。そこは川端康成の古都ではなかったが、私は小説の世界に入り込んだような気分になった。

そして、『古都』を読んでから二年後、私はようやく日本で本物の着物に袖を通すことになった。それは毎年七五三の日に開催される市役所の着物着付け体験の場であった。そこで着せてもらえた豪華な着物は、すべて市民が無料で貸してくれたものだという。それを聞いた私は、日本文化を留学生に紹介したいという市民の優しさに深く心を打たれた。その優しさのおかげで、一年生の時から憧れていた夢がついに叶ったのである。鏡に映った石竹色の着物を見て、思わず「美しい日本と私」という言葉が私の心に浮かんだ。着付け体験が終わった後、市役所の職員の方が言われた言葉を、今でもよく覚えている。「この活動は毎年行われます。この経験を是非、皆さんの後輩たちにも紹介してください」と。その温かい言葉は、私の二十歳の夏に美しい句点を打った。

今思い返してみると、ある目に見えない一本の「帯」が、私の大学時代、さらには中日両国の友好を結んでいるかのように感じる。現在は新型コロナの影響で、留学が難しくなっている。それでも、私のように日本文化に興味を持つ中国人は、様々な文学作品を通じて日本文化を知り、中日友好の「帯」を織っていくことであろう。私もまた『古都』を再読し、もう一度その詩的な言葉で編まれた日本文化を味わいたいと思っている。

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