これから始まるよ

華東政法大学日本語科2019級 汪雪瑩

 

「努力って報われると思いますか。」

「何かで成功した人は報われるって肯定的に言うし、失敗した人は報われないって否定的に捉えがちなんですよね。」

ドラマ『コントが始まる』の主人公の言葉が私の心に深く突き刺さった。

私は日本のドラマが好きだ。学生の私でも身近に感じられる世界を描いてくれる。だから、登場人物たちの気持ちの揺れや何気ない一言に、私自身の境遇を重ねやすい。

先の言葉が私の印象に残ったのは、高校の時からずっと感じていたことと重なったからだ。当時、私は成績を上げるために、何十冊も本を読み、偉人の名言もたくさん覚えたのだが、結果からいうと、成績が良くなったわけではなく、志望していた大学にも落ちた。それ以来、自信を失い、失敗を怖がり、いったい何のために頑張っているのだろう、と思う時間を長く過ごしていた。

そんな私に発破をかけてくれたのは、「努力って報われると思いますか」に対して里穂子が答えたあるエピソードだった。里穂子とは、お笑い芸人として売れることを目指す主人公の、数少ないファンの一人である。高校時代、里穂子が部長を務めていた華道部は、最後の全国大会で優勝できなかった。何年もそれを悔い、努力が実らなかったと感じ続けて生活していたある日、アルバイト先のカフェに来店したお客に、店内にあった花の名前を聞かれ、順に教えてあげたことがあった。すると、お客からいたく感動され、厚く感謝されたそうだ。

このエピソードを聞いた時、私は初めて、このような形で過去の努力が報われることもあるんだな、と思った。同時に、今までの考え方がガラッと変わった瞬間だった。

大学生になってからも、何かとうまくいかないことはある。例えば、以前、体育の授業で、スケートを選択していた。元々、私は運動が苦手で、リンクに立つにも一苦労だった。何度も何度も転んでは立ち上がり練習し、おかげで少し滑れるようにはなったが、成績は良くなかったし、落ち込むことは多かった。そんな苦い思い出だったこの経験も、里穂子のエピソードを聞いてからは、私の運動能力を鍛える大きな一歩だったんだな、と前向きに捉えられるようになった。

きっと人生に戸惑いがあるのは極普通のことだと思う。朝から晩まで電気がついている教室、友人との電話から聞こえるページをめくる音、横断歩道を走って渡るスーツ姿の人。日常を振り返ると、みんなの努力は一目瞭然なのに、私たちは、期待した結果がすぐに出ないと不安になる。でも、どうだろう。日々の努力を無駄だと判断してしまうよりも、どんな形で返ってくるか、気長に待ってみる方がワクワクしないだろうか。

そう、ついこの前も、日本語科の先生が私達に夏目漱石のある作品について質問したことがあった。それは、私が過去に読んだ作品だったので、すらすらと質問に答えることができた。ほら、またひとつ、あの日の努力が報われた。

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