見えない壁を押し倒そう

             南京工業大学日本語科三年生 陳紫翊

 

最近、『夢の壁』という本を読んだ。その本は藤本佐智の視点から戦後の中国での日本人の生活が描かれている。

中国で日本人の子供佐智は車夫の高叔父の「午寅」という息子と友だちになった。

午寅は母をなくして北京に連れてこられたのだ。彼の故郷には不思議な灰色の壁がある。伝説によると、子供が十五歳になると壁に登って眠り、自分の未来を夢見ることができるという。しかし、午寅が十五歳になった前に、母は弾丸の下で死んだから、故郷を離れた。

佐智は午寅を天からの贈り物のように思っていて、長い時間を楽しく一緒に暮らした。佐智が思いつかなかったのは午寅は中国人の友人たちと仲良くなるために、次第に彼女とも疎遠になっていった。

その本を読んで、二人の友情が終わったのが残念だと思った。友情が終わったのは、なぜなら、佐智が日本に帰ることだけではなく、戦争が両国の人々に与えた影響でもあったから。日本人も中国人も戦争に苦しめられ、自分の人生を変えられた。戦争は午寅の故郷の城壁のように、佐智と午寅の前に立ちはだかって、中国人の心と日本人の心を隔てた。佐智のお父さんが言ったように、「中国人と本当の友情を持つことは難しいのよ。僕の言うのはあなたをがっかりさせたけれど、それは僕が心配していることよ。」

痛ましいことに、今日にいたるまで、佐智の父親の心配は残っていることだ。

真の友情があるかどうかに関する答えは明らかにポジティブだ。歴史を覚えることはもちろん必要だが、歴史は憎しみを忘れさせない。お互いにもう少し勇気があって、盲目的な憎しみにとらわれることなく、心の中の本当の考えに従って行動し、盲目的な憎しみに縛られなければ、友情が生まれるかもしれないと思う。

同時に、『夢の壁』の作者に感謝している。この本は実は彼女の自伝にあたる。この物語は中国人にも、人類として、両国人民の平和への憧れはいつまでも同じであることを教えている。

私もかつての自分を振り返った。南京出身の私は、自分の専攻科に不機嫌に感じたことがある。しかし、今の時代、日中は歴史を直視し、時代の挑戦を共に受けてこそ、より大きな未来を持つことができるのだ。日本語を勉強して2年が経った今、私は日中友好を進むことが大切だと思う。将来については、日本語を活用して、日中関係に関する資料を整理できる仕事をして、日中の人々のお互いを理解の壁を崩していきたい。

見えない壁に阻まれた生活の中で、幸いなことに、あの穏やかな車夫と午寅は、まるで城壁を貫ける太陽のように、日差しを佐智に散らしたことがある。もし小説の結末に佐智と午寅はもう少し勇敢になってあの見えない壁を押し倒していたら、佐智はきっと彼とまた一緒にハーモニカを吹きながら、ひばりを捕まえたことを喜んで踊っているだろうと思う。日中両国の人々にとってもそうだろう。

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