特別な旅

浙江越秀外国語学院 陳敏

 

 「冷たくなった人間を蘇らせ、永遠の美を授ける。それは冷静であり正確でありそして何より優しい愛情に満ちている。別れの場に立会い故人を送る、静謐ですべての行いがとても美しいものに思えた。」これは「おくりびと」という映画のセリフだ。

 「おくりびと」は滝田洋二郎が監督を務め、第81回アカデミー賞外国語映画賞、および第32回日本アカデミー賞最優秀作品賞などを受賞した。この映画は授業中に先生が私たちに見せてくれたもので、私はこの特殊効果や刺激のないシーンの映画に惹かれた。この映画はチェリストの小林大悟が、楽団の解散で職を失い、妻を連れて田舎に帰るという物語。チェロを演奏する以外には何もできなかった小林が、就職活動に悩んでいたとき、年齢の要求もない、厚遇の求人広告を目にした。小林は社長にあっさり採用されて、その仕事の内容が実は「旅立ちのお手伝い」であり、具体的には納棺する納棺師であることに気づいた。小林さんは反発していたが、社長の佐々木さんの強い慰留と給料の良さに引かれて引き受けた。死との接触や納棺を重ねることで、小林さんはその仕事の意義や、死に対する新たな気づきを持つようになった。

 「それではただ今より、故人さまの安らかな旅立ちを願いまして、納棺の儀、執り行わせていただきます。みなさまどうぞ、お近くでお見守りください」納棺師として佐々木の下で働くようになった大悟が、初めて納棺を手がけることになる。納棺を始める前に、大悟が遺族に対して語りかける言葉。遺族たちは遠慮がちに少し近づく。このあと、納棺はおごそかに執り行われる。

  死は扉かもしれない、過ぎ去るのは終わりではない、超越の意味があて、この扉を開けて、次の旅に行く。小林の父は小林母子を捨てた、そして小林は父の姿を忘れていたが、父が手にしていた石を見て、父もまた彼を思い続けていたことを知り、納棺を終えた小林は父の姿を思い出した。この映画の最後に,小林が妊娠中の妻に石を与えたように、それは新しい命であり、新しい旅であった。

  誰もが逃れることのできない「死」を直視するとともに、いかに人生のエンディングをよりよく、意味のある場にするかを伝えている。そして自分の事業に愛着を持ち、努力を傾けている人の目には、卑しい事業はない。自分の事業が価値を生み出していることを知り、畏敬の念を抱いていたからだ。一つの事業は真剣に扱われるに値するものであり、またそのように扱われることで人に報いることができる。

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