やめよう 空気を読むのを

大連大学 呉明月

 

もしも空気が見えたら、そう思ったことがあるでしょうか。いい空気、張り詰めた空気、気まずい空気、甘い空気、実は我々の暮らしや幸せは思った以上にその場の空気に左右されています。 

「空気」という言葉は日本語の中に二重の意味があります。一つは文字どおりの意味で、もう一つは雰囲気のことです。日本人がよく口にする「空気を読む」という言い方は、周りの雰囲気に気を使ったり、他人の目を伺ったりしながら、行動するという意味です。  

私達の人生を振り返ってみると、他の人に好かれ、認めてもらいたい気持がよくあるでしょう。にも周りの人にご機嫌を取った経験があるでしょう。2019年、漫画を原作としたドラマ「凪のお暇」がTBSから放送されましたが、「空気を読む」べきかどうか話題になりました。わたしも見た瞬間、心に何かの芽生えが始まりました。 

「節約が趣味の28歳の大島凪は、常に空気を読んで周囲に合わせて目立たず謙虚に振る舞。ある日、凪は自分を蔑む同僚たちの陰口を聞き、さらに交際相手の我聞慎二が自分と体目的で付き合っていると知ってしまい、ショックで過呼吸で倒れてしまった。以後、会社を辞め、家財を処分し都心から郊外へ転居、全ての人間関係を断ち切った凪は、ゼロから新しい生活を始める。」というストーリーです。職場でいつもニコニコ笑って空気を読むのに仲間に仲間外れにされている大島凪は可愛そうですが、ドラマを見た時、彼女の身には私の分身が投影しているような気がします。私も毎日堅固な仮面の下で生活しています。時々他人との信頼関係を築けないと悩まされています。「一瞬だけでもいい、この世から逃げたい」と思うことがよくあります。しかし現実はそんなに甘くないので、深呼吸して引き続き生活をしていかざるを得ません。こんな繰り返しの中で、私は精神的にも体力的にも疲れ果てています。でも、ドラマの中で、凪は仕事をやめて、すべてのSNSを削除して、布団だけを背負って郊外に歩みだしました。逃走というより、新しい生活を迎えるのではないでしょうか。過去の生活を全部捨てて人生の再生を図ろうとする凪から勇気をもらいました。 

人間としてみんな多かれ少なかれ悩みがあるでしょう。誰でも人との縁を切るのは不可能なため、他人の目を完全に無視することはできないはずです。私たちは孤立されないために、凪のように仮面をつけて場の空気を読みがちになります。周りの人間関係を維持することはもちろん重要なものですが、しかし、人生は一回しかないから、自分の人生をいちばん大切にしていくべきではないでしょうか。ずっと他の人の期待に応えて生きるのはつらいでしょう。 

空気って、読むものではなくて、吸って吐くものだと信じています。凪のように、たまにお暇をいただきましょう。 

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